サクラノ詩 /サクラノ刻 感想 幸福というのはこういうことだ、これでいい
まごうことなき傑作だった。一大傑作である。 群像劇は『素晴らしき日々~不連続存在~』よりいっそう重層的で入り組んでいて、因縁が絡み合って解き解れ、生と死と愛と哀が交錯し、美と醜が対比され、呪われた生と祝福された生、悲嘆に暮れる悲劇とまばゆい幸せとが糾えて語られ、あるいはそれらに本質的な違いなどないかもしれない。友情が魂を昂らせて、時に悲しみで身を引き裂き、子が親の背中を追う一方で親は子に救われ、...
続きを読むぼっち・ざ・ろっく!(アニメ) 原作からの変更点について エピソード強化・人物造形・押し入れの冒険
『ぼっち・ざ・ろっく!』原作を読んで感想を書く予定でしたが、アニメの表現・演出とエピソードの補強があまりにも好きすぎて、いち漫画として平常心でレビューするのが難しく、代わりにアニメでの変更点について書くことにしました。主にエピソードの強化とキャラコンセプト・イメージの統一についてです。ひとりと押し入れのモチーフ・猫背のスタイル エピソードのアレンジ・演出でもっとも印象深かったのは、ぼっちちゃんにつ...
続きを読むぼっち・ざ・ろっく!(アニメ) 感想 ここがオレ達の聖地(スターリー)だ
アニメとして100点満点の出来だった。当然、優れた原作あっての出来だろうが、映像と音の総合芸術としてあまりにも完成度が高くてブルってしまった。 まず、ストーリーとサブテキストの確かさが完成度の骨子にあるのは間違いない。主人公が逃避行動として没頭、耽溺していたはずのこと・もので才能を開花させ、周囲と人を動かして自我を取り戻していく王道を嫌いなやつがいるだろうか? 私はその一人ではない。オタクが社会...
続きを読むすずめの戸締り 雑感
TLはほぼ好評だが、自分はあんまり満足度が高くなかった。特に冒頭がのめり込めなくて、そのテンションを最後まで引きずってしまった。冒頭の掴みと行動原理を支持できるかどうかって、2時間こっきりの映画ではテンションにもろくそ関わってくるなと。以降ネタバレ。 まず、全体を通して、話の展開にこっちの情動がなかなか追いつかなかった。特に旅立ちの部分がワクワクしなくて、応援したい気分にあんまりならなくて、逆に...
続きを読むリコリス・リコイル 感想 「設定」をまんま出すな、世界観と人物像を創ってくれ
エスピオナージとしても、テロや管理社会に挑む社会派ドラマとしても、群像劇としても粗がありすぎる。設定だけ作って作劇を考えていない。後半は人物の行動原理に共感できないところが散見されてさらにしんどかった。作画とキャラデザインがよいのは言うまでもなく、千束とたきなの関係性は好きだったし、映画のようなよいショットもある。だがしかし、ちさたき尊い……と耽溺するには突っ込みどころや倫理の問題が多すぎる。無駄...
続きを読む魔法少女消耗戦線 another record -ちいさきものたちのゆめ- 感想 月生まれは義理堅いんですのよ、それはそれは残酷な話ですわ
本編で心を動かされた人は絶対に読んだ方がいい。楽しみつつもお金のかけ方や作り込みに不満があった人は、万難を排してやるべし。 本編の補完については、くどくどしいものやしょうもないものもかなりあったが、「アリシャ・オラオンは死んだ」がとにかく素晴らしかった。私は本編の感想でこんな不満を書いていたが……。 逆に明らかに欠点と言えるのは、構想に対して立ち絵やCG、ボイスといった物量が明らかに足りていないとこ...
続きを読む百合ゲーム レビュー・感想まとめ
タイトル点数公式『アカイイト』100URL傑作和風伝奇百合ゲー、ノベルゲームが辿り着いた最高到達点の一つ。わが原点。『素晴らしき日々~不連続存在~』100URL「エロゲー」の終局特異点、世界の限界を超える詩。幸福、幸福って何だ?『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ>』100URL絶望と死の渦中で希望と生がひかめくダーク・スチームパンク。マルチシナリオよし、殺陣もかっけー。『魔法少女まどか☆マギカ』100URL虚淵がアニメのシマ...
続きを読むファイアーエムブレム 風花雪月 感想 血に塗れた覇道を往く女と添い遂げられるか?
世界を革命する英傑であり、同時に戦禍を引き起こす暴君でもある女。あなた(ベレス)はこの血の雨を降らす女に寄り添うことができるだろうか? この問いが作品のエッセンスであり、答えによって評価が大きく左右されると思う。シリーズ最高傑作の呼び声も高い『ファイアーエムブレム 風花雪月』は任天堂の人気シミュレーションRPGシリーズの最新作で、メディアのレビューでも個人の感想でも非常に評価が高い。自分でもプレ...
続きを読むアオイシロ 感想 一から作り直せ、話はそれからだ
初報を聞いて狂喜して発売を待ち侘び、いざ読んで死ぬほど落胆させられた。伝奇・民俗学の知識に裏打ちされた設定は非常に練られており、ビジュアルとサウンドも当時の最高峰の出来だが、肝心かなめのテキスト・脚本・キャラクターが酷くて何もかもぶち壊しにしている。あえて地雷と呼ばせてもらう。『アオイシロ』については、読了直後に怒りに任せて書いたレビューが既に存在するが、10余年経った今読み返すとあまりにも乱雑...
続きを読む彼女と彼女と私の七日 -Seven days with the Ghost- 感想 So get for brand-new truth.
古きよきネットの時代が生んだ名作フリー百合エロゲー。ノベルゲームの点数を総合力ではじき出すなら、フリーゲームでこれに比肩するものはそんなにないです。個人的には『narcissu』『True Rememberance』『ドキドキ文芸部』などに並び称される作品だと思っています。金額単位の満足度は0除算でエラーになる『彼女と彼女と私の七日 -Seven days with the Ghost-』の特筆すべき点は、有志を募って作成されたフリーゲームである...
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