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まちカドまぞく(アニメ) 感想 序盤かったるまぞく、後半しりあがりまぞく はてなブックマーク - まちカドまぞく(アニメ) 感想 序盤かったるまぞく、後半しりあがりまぞく

2020/03/14
百合レビュー 2
 中盤までは話の中心、世界観の軸がいまいち掴めない上に、主人公のひとりであるシャミ子のまっとうな行動原理が見えてくるのがまぁ遅い。展開に連続性が感じられないせいでどうにも盛り上がりに欠ける。しかし、シャミ子と桃がお互いに惹かれていく過程は甘酸っぱく、脈絡のないギャグとしか思っていなかった要素がやにわに重大な意味を帯びてくる演出は見事でハッとさせられた。泣きゲーの文法に弱い自分にはふかぶかと刺さった。

『まちカドまぞく』は闇の一族の血に目覚めた少女・シャドウミストレス優子と魔法少女・千代田桃とのゆるゆるな対決と共闘を描いたファンタジックコメディーだが、ギャグ漫画として見ると、ギャグと世界観の中軸となる部分がぼやけているのが気に掛かる。ギャグのキモが、本来は退治すると側される側、宿敵同士であるはずの魔族と魔法少女がほのぼのとじゃれあっている点だとするならば、その尊さやかけがえのなさは対比される存在、殺伐とした世界観がどこかしらで提示されていなければ際立ってこない。物語の舞台である多魔市は魔族と魔法少女が共存する希有な場所だという説明があったが、他の町の様子がわからないのでどうにもピンとこない。作中で具体的な描写はなく、桃がシャミ子を鍛えようとするときに「自分みたいになぁなぁで済ませる人ばかりじゃなく容赦ない人もいる」と言っていたのと、ラスト近辺で先代の千代田桜が結界を張るまでは殺伐としていたことが語られるくらい。ハードな魔法少女の世界観を視聴者の前提知識に頼っているならば、ちと弱いと思う。また、魔族がぽんこつのへっぽこで、魔法少女が(物理)寄りというのもかなりどこかで見た感がある。序盤で、シャミ子が桃を倒すために割り箸でっぽうを作ろうとするところや、てるてる坊主に丸めたティッシュをぶつけて飛び道具の特訓をするところは、正直かなりおさぶかった。あるいは、超常の存在が平凡な日常を送っているのがキーだとするならば、『天体戦士サンレッド』や『聖☆おにいさん』を例に挙げるまでもなく、使い古されている。舞台設定のつかみはいまいちだ。
 あと、私がこの作品の完成度について首をかしげるところは、新しいエピソード、新たなる目的の提示や新キャラの登場があれども、一つ一つで完結してぶつ切れになってしまうところだ。例えば、シャミ子の危機管理フォームの習得。主人公のパワーアップ、新フォームへの変身というのは修行の描写や覚醒の過程をうまく書ければ男のコのハートをワシ掴みにするものなのだが、このアニメでは小倉というぽっと出の変な女に変な丸薬を飲まされることでさくっと済ませてしまう。こいつは神秘研究会の部員だが、出自も派閥も魔術の体系も一切が謎で、ただの便利キャラなのかもよくわからない。光の一族と闇の一族の世界観から浮いていて薄気味悪い。例えば、桃が魔力を奪われたことで気配が揺らぎ、余所から武闘派の魔法少女などの邪な存在が紛れ込む可能性がある事が示唆されるところ。私は新勢力や新キャラが町を来訪して話も勢力図も大きく動くのかと思っていたが、桃が助っ人として呼んだミカンが来たあとは「別にそんなことはなかったぜ!」で終わってしまった。そのミカンについてもひとことふたこと。彼女は感情が(マイナス方向でもプラス方向でも)昂ぶると周囲の人に災難が降りかかる呪いに掛かっており、これがシャミ子たちを巻き込んでドタバタを引き起こすのだが、結局それだけで話が終わってしまう。ミカンは登場回以降は変身すらしないし、意味深な呪いに掛かった経緯も明かされずじまいだった。彼女の登場が魔法少女の世界観の補強になっていたかというと、それもかなり怪しい。目新しい展開はあれども、次の展開に結びついていかない。単発のギャグで終わってしまって物語をけん引していかない。この点が本作の序盤、中盤がいまいち盛り上がりを欠く一因ではないかと思う。
 もう一つの大きな問題が、序盤においてシャミ子が桃につっかかる動機がいまいち弱いところだ。「闇に目覚めた子が暴走しないように見守る」という目的が早々に提示されていた桃とは対照的だ。冒頭で清子に「光の一族の生き血を奪えば金運がよくなってファミレスで頼み放題」と言われてやる気を出していたが、そんなしょうもない動機を視聴者が応援したいと思うだろうか? 4話でシャミ子が「わたし自身、魔法少女を倒して何がしたいんでしょう?」と自虐していたが、わかっとるやんか。子どもの頃に身体が弱くて家族に迷惑を掛けていたから役に立ちたいという立派な動機があったのだから、もう少し早く提示されてもよかったと思う。一方で、しょんない動機で戦いはじめたはずのシャミ子が家族を守るために強くなりたいと願い、桃のパーソナリティに触れて、今の自分がさまざまな人の尽力の上にあることを知ったことで、「私自身の戦う理由をやっと見つけられた気がします」と述懐するところは、大きな成長が感じられて熱かった。あの感慨深さは、へっぽこぶりの前振りがあってこそのものだろう。ただ、何度も言うように、冒頭の掴みが弱いことは如何とも否定しがたい。

 ネガティブな話はこの辺で。本作で面白かったところの一つが、桃がシャミ子に趣味の筋トレやその他もろもろのことでぐいぐい来る圧の強さだ。傍目にはクール系で人と距離を取っていそうな女が、自分にかまちょしてくる女に興味を示して距離感を間違えて距離を詰めてくるさまに笑ってしまった。シャミ子に怪しい実験をしようとする小倉を制して「さっきからぐいぐい進めてるけどいったん落ち着いて。シャミ子怖がってるから」とかのピッピ面(づら)して言っていたが、「お前はどうなんだよ」と突っ込んだのは私だけではあるまい。それと、『まちカドまぞく』を「シャミ子が悪いんだよ」で認識している人も少なくないと思うが、このねつ造セリフの凄いところは、視聴者の十人が十人とも「桃がどっかで言ってた気がする」「そのうち言いそうな気がする」と思うことだ……。ニコニコ動画で「原作とアニメで言っていないだけ」というタグを見かけて爆笑したが、このパワーワードはかなり的を射ている。桃については声優さんの演技も素晴らしい。低いトーンだが静かな興奮を感じさせる声で、物理的強制力も併せてシャミ子に迫っていくさまに凄みがあって笑けた(ちなみに、高いトーンの演技はシャミ子の想像での「魔族ちねりじゃーい」などで聞ける)。
 関連して、馴れ初めはぐだぐだの因縁付けだったはずの二人が、桃はシャミ子のけなげさや自分の弱さを認める芯の強さを知って、生活周りの世話をされるうちに、シャミ子は桃に助けられつつ不器用なやさしさや危うさを知ってしまううちに、お互いに惹かれあっていくさまが甘酸っぱかった。『夢現Re:Master』をやったときにも思ったが、私は有能だが生活能力が低い女がどんくさい女にまめまめしく世話を焼かれていくうちにほだされるというシチュエーションに弱いらしい。いいよね、廃工場で飛び道具の修行をする回で、桃がシャミ子がとっさに口走った「みんなが仲良くなりますように」という想いを聞いて、シャミ子を鍛えてあげたいと思うところ。桃のエーテル体の身体がシャミ子とシャミ先に魔力を奪われて不安定になって、シャミ子が心配するのと同時に大切なことを教えてくれなかったことにさびしさを感じ、特訓にほんの少しやる気を出すところ。それと、この作品で印象的に使われているのが「これで勝ったと思うなよ」という決め台詞。一話でさっそく出てきて要所要所で口にされる、本作を象徴するような名台詞だ。思うなよ、と相手に催促している時点で内心では負けを認めているわけであって、この語るに落ちている感が実によい。私が好きなのは、肉屋のバイトでウインナーを台無しにしそうだったところを魔法少女の力でカバーしてもらい、初めて捨て台詞を飲み込んでお礼を言うところ。パソコンの知識で完敗して減らず口をたたくが、かわいい良のために教えを乞うところ。そして何と言っても、自作のハンバーグで体調を崩した桃が看病されて、自分の部屋に掃除機をかけるシャミ子の背中に掛ける「これで勝ったと思うなよ……」が最高だった。繰り返しになるが、人が人に認められたり惹かれたりするところを説得力を以て書いている作品はそれだけで評価されるべきだと思っている。
 物語の本筋については、桃の姉である千代田桜の過去の活躍が判明するあたりからだんだんと面白くなっていった。まさか吉田家の極貧4万円生活の原因が、身体の弱いシャミ子の健康運をどうにか上げるために金運を調節せざるをえなかったからとはなぁ。吉田一家が桃のパソコンを一家総出のドジで粉砕しようとしたときは「なんだこのアニメ」と思ったが、事情を聞くとなるほどとなった。私は完全に『Kanon』『AIR』で育った世代なので、ナンセンスなギャグとしか思っていなかった要素がシリアスパートで重要な意味を帯びてくる演出にどうしても弱いんだ。ここの過去が明かされることで、桃とシャミ子の因縁にも一本の芯が通ったし、後半からの評価はうなぎ登りだった。であればこそ、きれいに第一部完にはなっているが、物語がここからというところで完結してしまったのはもったいなく感じたかな。

 原作派からはアニメ放映以降がさらに盛り上がると言われていて、アニメも後半以降は尻上がりに面白くなっていったので、5巻まで出ている原作を読んでみる。その感想が先になるのかアニメ二期の感想が先になるのか不明だが、また次の機会に。
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百合ゲームレビュー他。アカイイト、咲-Saki-、Key・麻枝准、スティーヴン・キングの考察が完成しています。
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コメント(2)

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Re: 涼水菜々緒さん

パパさん見た目と声が一致しないですしね。漫画だと一目瞭然なんですけど。
そういえば、正体不明のナレーターが実は物語を俯瞰視点で見守る人物だっていうのも一昔前のシナリオゲームの鉄板ですね。

2020/03/20 (Fri) 01:21

涼水菜々緒

「お父さんがあなたに言っていた事があるんです」→「頑張れ優子。誰よりも優しく強くなるんだ」
この間に数シーン挟んでいてラグがあったので、まちカド見終わった私は  お父さんがシャミ子に言っていた事って結局なんだったの?  と延々悩んで自分の読解力の無さに落ち込みました
みんな普通に自然にこの流れ読み解けたのかな…

2020/03/17 (Tue) 23:25