願いの欠片と白銀の契約者(アグリーメント) 雑感 まどマギもどき失禁ジュブナイルノベル 

公式サイトを見た時点で「見てくださいこの設定ノートの分量! 独創的な世界観! 膨大な裏設定! すごいでっしゃろ! シナリオは途中で力尽きました(><)」系ゲームの匂いがぷんぷんしていて、体験版でさらにその疑いが強くなったが、本編もそのまんまだった。ますますもって語ることがない。出来の悪い邪気眼ジュブナイル作品ほどコメントに困るものもない。登場人物が延々と説明口調で「ぼくのかんがえたすごい世界観・設定」を語り続けるダレ場あり(私は「ノートの設定披露宴」と呼んでいる)。コロコロと変わる朝令暮改の設定あり(「いつからこの戦いの目的OR真の敵が○○だと錯覚していた?」「何……だと……」というやりとりが一度や二度ではない)。致命傷・再起不能のバーゲンセールとベホマかポケモンセンターのようなお手軽復活祭りあり。喩えるなら、Fateの悪点だけを抽出して凝縮一番搾りしたような作品である。

まずは作品のキャッチコピーである「そして、私の世界は一変する――」についてです。日常から非日常への転落というのは伝奇作品における永遠不滅のテーマですね。しかし、『願いの欠片(略)』の主人公は日常の描写がえらく薄っぺらく、普段はどんな人間で、どんな価値観を持っていて、日常のどんな部分を大切にしているのかさっぱり伝わってきません。そういった日常の部分が魅力的に描写されていないので、非日常のパートに推移するときにも不安感や寂寥感が全くといっていいほどありません。実は主人公が人形だったのでした! というブレラン的なオチでもない限り納得できないレベルの薄っぺらさです。
(体験版時点の感想)
まんまだった。あまりにもひねりがない。
違和感は非日常の伝奇パートに移ってからも消えることはありません。主人公はなんだかよくわからないパワー(NYP)を持っているらしくて、なんだかよくわからない敵を視認してしまうことから事件に巻き込まれるようになり、なんだかよくわからないうちになんだかよくわからない組織のなんだかよくわからないご神体(女性的な外見です)にレイプされてそこのメンバーにさせられてしまいます。何が何やら茫然自失としている主人公に対して組織のメンバーはあくまで冷たく、当初は汚い物でも見るかのような目を主人公に向けています。小学生のヒロインAは茫然自失の主人公に心ない言葉をかけてさっさと立ち去っていきます。同級生のヒロインBは混乱してすがる主人公に対してシャーペンの芯を目に突きつけて威嚇します。割とナチュラルに冷血人間だらけの組織です。異能を持った巻き込まれ型主人公が謎の組織に流されるまま配属され、古株のメンバーに不信感を持たれて不和が生じる。それ自体はお約束の展開でしょう。最近読んだ漫画でも『進撃の巨人』に同様の展開がありました。そこで新参くんが活躍したり誠意を見せたりしてメンバーの信頼を勝ち取っていく過程を、自然かつインパクトのあるものとして描写できるかどうかがライターの腕の見せ所です。しかし、『願いの欠片(略)』の主人公は教育係のヒロインBと一緒になんだかよくわからない任務を一回こなして雑談しただけで、そいつの信頼と好意をさくっと獲得してしまうのでした。あっという間に好感度のメーターがぶっちぎれていて、任務の帰りの電車では既に雌の顔を見せています。なんですかこれは。こんなやらせくさい達成感では感情移入もへったくれもありません。もののついでに、いつの間にやらヒロインBの好感度もうなぎ登りになっていて、テンプレのツンデレ行動を取りつつせっせこ世話を焼いてくれるようになっています。中高生向けのジュブナイルノベルにおけるナデポ、ニコポ並の不可解さです。
(体験版時点の感想)
本編も同様の調子だった。
ピアノの鍵盤を撫でるように、少女の太腿部を白い指が踊り、スカートを割って、核心へと近づく。
「さあ、わたしを受け入れて……」
「あっ……ああああああああああっ!」
少女の脚を激しい失禁の痕が流れ落ち、がくがくと震える膝が砕け、その場に腰から崩れ落ちる。
(本編の性描写)
ライラの庭の真ん中に、ぽつり、と制服姿の少女が立っていた。顔は伏せていて、見えないが、髪は乱れ、ブラウスのボタンが淫らにはだけ、太腿が失禁のあとに濡れていた。
「ちょっと、あんた、どこから……」
「わたしを愛して、わたしを愛して、ねえ、みんな、わたしをもっと愛して……あっ、あ、んっ……」
ビクッビクッと彼女の足が痙攣し、太腿部を新たな失禁のあとが流れ落ち、足下に薄い水溜まりを作る。
(本編の性描写)
さて、ひとくちに邪気眼、ジュブナイルと言っても、当然優れているモノと月並みなモノが存在する。『願い(略)』は言うまでもなく後者だ。この作品は珍しい全年齢対象(15歳以上推奨)のPCアドベンチャーゲームなのだが、キスやペッティングなどの露骨な性行為の描写、「頂点」「失禁」といった単語を使った性的絶頂の比喩、生首が転がったり皮膚が焼け焦げて骨が露出したりする欠損描写、はたまたネクロフィリアの描写などが選り取り見取りである。確かにジュブナイルには、刺激に飢えた少年少女の欲求を満たすための安っぽいエログロが欠かせない。しかし、上にも書いたようにライターが溜めを作るのが致命的に下手くそなせいで、かけがえのない日常に忍び寄る非日常(官能、暴力、絶望……)という対比が全く活きておらず、また馬鹿の一つ覚えで失禁! 首チョンパ! レイプされた過去! 失禁! 絶頂! 爆殺! レイプ! 失禁! ネタが繰り返されるだけなので、読んでいてお下劣という印象しか受けなかった。単調すぎて悲壮感も絶望感も何もあったものではない。
『星彩のレゾナンス』のライターにも言ってやりたいのだが、『まどマギ』は平凡な少女が魔法少女へ変身しようという王道の導入部、蒼樹うめのかわいらしいキャラ造形やほのぼのOP、コピーライター顔負けのハイセンスなサブタイトルといった万全の仕込みがあり、また絶望に次ぐ絶望が提示されていく構成が抜群に練られていて、そして何より、我々にとって愛と希望の象徴である魔法少女が冒涜されることが、読み手に絶望と衝撃を与えるのだ。プロットと大枠の設定だけパクって、よくわからない巫女やよくわからない人形討伐隊に何となく「敵の正体が未来の自分たち」「騙されて身体を作り替えられる」「陰鬱リョナ」「血みどろバトルロイヤル」といったことをやらせても、二番煎じにすらなりゃあしない。そして、丹念に積み上げた絶望があって、さらに虚淵お得意の宗教的モチーフが作品の随所で活かされているからこそ、まどかによる因果律を凌駕する「救済」が、たとえご都合主義であっても受け入れられるのだ。単に特別で選ばれた存在であるところの主人公がイヤボーン覚醒で世界を救済してみせても、毒電波やセカイ系や俺たちTUEEEEEEEEEEE系ライトノベルにしかならない。
あ、でもね、瑠子って、そっちのけがあるから、気をつけたほうがいいよ?
(グランドエンド間際での発言)
百合ゲーとして見ても、ぶったたくほど悪くはないが、とり立てて褒めるところも無い。ところどころで上記のような引っかかる表現がある。そもそも恋愛描写自体がニコポレベルなので、まともな評価に値しない。
『願いの欠片と白銀の契約者(アグリーメント)』が駄目な邪気眼ジュブナイルだと、体験版をプレイしてようやく気付くのが三流、公式サイトを流し読みして気付くのが二流、タイトルの『契約者(アグリーメント)』を読んだ時点で気付いて一流、気付いたのに無駄な希望を捨て切れず突貫したのは五流である。
『Fate/stay night』か『魔法少女まどか☆マギカ』か、でなければ『あやかしびと』(ライターは違うが同社作品)を観賞した方が百万倍楽しいことうけあい。何が何でも全年齢作品で少女が失禁・絶頂するところを見たいキッズ以外にはプレイする価値が無い。
願いの欠片と白銀の契約者(アグリーメント)

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