星彩のレゾナンス 感想 アカイ少女アオイ☆マギカ、感感俺俺添え 

とにかく、ライターの一人であるmadoca(巴まどか)が担当したとおぼしきツンデレ帽子(風間由布)、ベルさん(保科恵)、烏月さん(中村真琴)シナリオが脚本、テキスト共に目に余る酷さで、作品の品位を著しく損ねている※。グラフィックも線画と塗りについては水準以上だが、イベント絵も立ち絵も枚数が足りていないし、巫女装束は「ガイジンがかんがえたさいきょうのMIKOファッションショー」という有様である。和風伝奇作品としてどうかと思う。おまけにサウンドはへっぽこで、システムはろくな演出を使っていないにも関わらず許されざる重さと、全般的に低品質である。2013年に発表された作品が認められる水準からかけ離れている。
奈岐ルートだけはテキストの分量しかり、CGの枚数しかり、一人だけノーマルエンドを経てのトゥルーエンドがお膳立てされていることしかり、外枠だけ見ても別格扱いだ。シナリオについて語っていくと、あらすじは鬼子として疎まれていた少女との交流という伝奇作品の王道そのもので好感が持てる。そしてライターが調べ物を念入りにしてから執筆に臨んでいることが随所でわかる。島の伝承(神狼と猿神の死闘)をシナリオで準えているのが心憎いし(そもそもこのルート以外で出て来た記憶がないが)、主人公と奈岐の何気ないやりとりにそれっぽい蘊蓄を織り交ぜていることも評価したい(塩の霊験については『二重影』か何かで聞いたな)。また、奈岐の能力を駆使して物語の核心に迫る謎解きパートがある。奪われた星霊石を奪取するための駆け引きがある。主人公勢の挫折と奮起が実に三回も用意されている。イベントをなるだけ盛り込んで物語を面白く展開しようという心意気はよしだ(その正否はさておき)。私が百合ゲーにゲロ甘いことを差し引いても、がんばり賞を貰える出来だと思う。しかし、褒めるのはここまで。はっきり言って既視感だらけで、同ジャンルにおける先人の作品を凌駕するような、絶対的な魅力が無い。「なんかこれ『アカイイト』と『アオイシロ』を足して3で割って『魔法少女まどか☆マギカ』を一さじ振ったような作品ですね」という言葉に対して、私は何ら反論の言葉を持たない。伝奇作品として致命的なことに、世界観の根幹に係わるガジェットである星霊石の象徴性や劇中で果たす役割が中途半端ですっきりしない。人と人とを繋ぐ縁の糸であり絆の象徴である贄の血なのか、希望の象徴である変身アイテムと絶望に濁った心が表裏一体になったソウルジェム・グリーフシードなのか、あるいはシンプルに元気玉なのか、どっちつかずでぱっとしない。その一方で和魂と荒魂の考えはシナリオに絡めてあってまずまず悪くなかったが。また、テキストの拘りが足りない。読者をむんずと掴んで離さぬ牽引力が感じられない。お世辞にも軽妙な筆致とは言えない。シナリオの佳境における複線を回収するための怒濤の説明口調がしまりない。奈岐ルートに情報量が一極集中しすぎていて他のルートとバランスが取れていない。他のルートをプレイしても目新しさがさっぱりない。次のヒロインを攻略しようというモチベーションが続かない。世界観の矛盾が気になって仕方がない。「穢れは苦しんでいるのだから祓ってやれ」と息を吐くように外道な嘘をつく母ちゃんに共感できるわけがない。私の不満点をざっと挙げるとこんなところだ。
せめて、西村悠一担当のアイマス先輩(禰津八弥子)と母ちゃんシナリオが奈岐のものと同水準で、相互補完して全体的に完成度を上げていればなぁ、と思う。アイマス先輩はまず個別ルートへの分岐の仕方に愛がない。奈岐シナリオの佳境でいきなり分岐するので、最初は別エンドへの分岐だと思っていた。奈岐との関係が割とのっぴぴきならないところまで深まったところで、主人公がやにわにアイマスさんを押し倒して手マンを始めるので、私は最初バグかと思った。そして、この人のように生まれながらに業を背負った種族のヒロインは、過去の蒼々たる伝奇作品に比較対象がいくらでも存在するので、脚本を徹底的に練り込んであらん限りの筆力で書き込まないと差別化は難しい。母ちゃんはシナリオが短すぎるし、他のルートで確定している情報を今さら得意げに開示されても反応に困った。私がここで思い出したのは『アオイシロ』のナミルートとグランドルートだ。あの関係に近いものがある。母ちゃんルートはいっそのこと奈岐と統合してしまうのも手だったと思う。
伝奇要素がちょろちょろ被っているのも一因だが、私は『星彩のレゾナンス』をプレイしている間、『アオイシロ』に関するあれやこれやを思い出してばかりいた。百合ゲーかつ和風伝奇ゲーで、発売延期の末にやっつけ仕事で体裁だけ整えての納品、激しすぎるルートごとの出来の差(『レゾナンス』はライターの歴然とした実力差、『アオイシロ』は麓川御大のモチベーションと執筆時における体力の差で、原因は全く違うだろうが)とくれば、往年のおっさん百合ゲーマーはピンと来るだろう。そうか、あれから五年が経とうというのか、私も年を取ったものだ。当時のほろ苦い感情が甦ってきて胃の腑が重くなるのと同時に、『アオイシロ』の評価を改める必要性をひしひしと感じた。人間、五年も経てば価値観も変わってくるものだ。
割と本気なのだが、『レゾナンス』は爽快感も戦略性もクソもない不快な3Dアクションパートと納期に間に合わせるためにぶん投げられたであろうmadocaの担当シナリオを削除して¥2980で売るか、あるいは奈岐シナリオだけで¥1980にするべきだったんじゃあないだろうか。madocaのシナリオは登場人物の浅はかさと薄っぺらさを助長し、西村悠一の担当分だけでも目に付く設定の矛盾、行動原理の不一致を修復不可能なレベルまで広げているだけだ。魅力的な物語の提示から始まり、他ルートへ繋がる複線の展開と回収、人間の描写や世界観の構築、IFの世界の提示と続く、ADVの個別シナリオが担う役割を一切果たしていない。断言するが、害悪にしかなっていない。
※2013/12/29追記 巴まどかのシナリオは納品後勝手に差し替えられた、と本人の弁
それにつけてもmadocaシナリオの酷さよ
一つ、脚本が体調を崩すほどに面白くない。帽子はメシ食って茶をしばいて談笑していたらいつの間にか好感度がメーターをぶっちぎっていて、あとは安っぽい悪堕ちイベントと鬱イベントを消化しつつ、なし崩しにアイアンメイデン母ちゃんを倒してTHE END。ベルさんはアイマス先輩と同じように、帽子シナリオが佳境に入ったあたり(キスの練習からの手マンと貝合わせをかましたあとだったと記憶している)で唐突に分岐する。やる気と愛情が欠片も感じられない。烏月さんは不殺を守る主人公勢に対して(ソウルジェムが濁ってしまうのだ)自分の命を盾にして殺しに掛かるという、少年漫画の小悪党みたいな行為に及ぶ。おのれはアンジェロか王国編の海馬くんか。驚くことに、このような主人公としての資格を失うような狼藉を奈岐ルートとアイマス先輩ルートで二回も披露する。お家芸なのだろうか。私はそもそもツンデレという人種全般が嫌いで、この下衆野郎も自分のシナリオに入ったらデレて別人と化し、主人公の上でへこへこ腰を振るんだろうなとため息を付いていたら、何の意外性もなくその通りだった。
二つ、脚本の駄目っぷりが霞んでしまうほどテキストが酷い。一人称視点がいつの間にか似非三人称視点になっている。「感じ」「何か」の他用と無駄な反語の乱用。読点を挟んだ前後で話が繋がっていない。そもそも句読点の使い方を誤っている。読者のことを考えず、一クリック分の文章に書きたいことを書き散らす独り善がりぶり。そして、感感俺俺。問題点の一部は西村悠一の担当分でも散見される。和風伝奇作品のテキストとしてどうか評価できるレベルにまで達していない。論外である。
体験版の範囲で既に日本語として怪しい文章が見受けられたが、製品版でも全く修正されていなかった。YATAGARASUとしてはこの水準で問題ないということなのだろうか……。
「松籟会って人たちが関わってるみたいなんですけど、
船員さんも地元の人も何も話してくれなくて」
まるで口止めされているかのように、松籟会のことになると、
お茶を濁されてしまった。
「松籟会はこの島を取り仕切っている人達のこと。
鼎を織戸伏島に近づけたくなかった」
あっさりと――その女の人が言ってしまう。
「島の人達は松籟会を畏怖している。だから何も言えない」
ヒロインAによる、出会い頭に主人公を殺そうとしたヒロインBが属するという謎の組織「松籟会」についての説明だ。「鼎を織戸伏島に近づけたくなかった」って、それはBの客観的な心情であり、ライターの頭の中にある設定じゃあないの? それを生のままAの口を通してぶつけられると、まるで設定.txtを音読されているみたいでもの凄い拒絶感がある。
海辺近くの小高い岩場を未来さんに連れられて昇っていく。
その間もずっと手を繋いだままで……小さい頃、お母さんがテーマパークに連れて行ってくれた時を思い出させる。
あの時もずっと手を繋いだままだった。
迷子にならないように?
ううん、違う。はぐれないようにじゃなくて、
お母さんと一緒にいる時間が私は好きだった。
>小高い岩場を未来さんに連れられて昇っていく
「昇っていく」だと私はウィーンとエレベーターやエスカレーターで直線的に上昇していく絵面が浮かぶ。ここでは母ちゃんに手を引かれながら岩場をえっちらおっちら上に進んでいるシーンなので「登っていく」でないと駄目だろう。プロのライターなら字面が与えるイメージにもっと注意を払ってほしい。
>その間もずっと手を繋いだままで……小さい頃、お母さんがテーマパークに連れて行ってくれた時を思い出させる。
手を繋いだまま、というのは現在の状態だが、三点リーダを挟んでいきなり在りし日の母親とのエピソードに突入している。一度読んですんなり頭に入ってこない文で、情景がぱっと思い浮かばない。「そのことが~思い出させる」の形にするか、手を繋いでいることは前の文章に強調する形で入れるか、手を繋いだままだった、で一度切って「懐かしい感触だ。小さい頃、お母さんがテーマパークに……」とワンクッション置いて母親のエピソードを語ってくれると、脳内にすんなり映像が浮かぶのだが。
>迷子にならないように?
>ううん、違う。はぐれないようにじゃなくて、
>お母さんと一緒にいる時間が私は好きだった。
ATOK先生が《否定の連続》とカンカンでいらっしゃる。
別に語り部が自問自答するのは構わないが、もう少し読者の理解が追いつくのを待ってほしい。あまりにも唐突で一人で会話するのが癖のかわいそうな子に思えてしまう。
読点の前後で意味が繋がっていない。酷すぎる。本当にプロが書いているのか。名義だけ貸してバイトの学生に書かせたんじゃあないのか。
>その間もずっと手を繋いだままで
>あの時もずっと手を繋いだままだった
フルプライスの商業作品ならもう少し表現に拘れ。
今日は日曜日ということもあって、由布も恵も一時帰宅しておらず一人で暇な時間を過ごしていた。
そいつらが一時帰宅していないならなぜ一人なんだ? と疑問符が浮かんだが、一時帰宅して「居らず」なのか……。分かりづらい。
ベッドから出て、カーテンをめくり外を覗き込むが、
辺りは本当に深遠とでもいうように真っ暗で、
夜空に浮かぶ星々が綺麗な光を放ち輝いていた。
これまた、妙な高揚感に包まれて、眠れない気がしたが、部屋の中をウロウロしたり、ベッドで暴れて由布を起こしてしまうと悪いと思い、こっそり部屋を出て、寮内を散歩することに決める。
「起こさないようにしないと……」
ふと、部屋を出ようと思って、由布のベッドの側を
通り掛かった時に由布がぐっすり眠っているか確認しようと
思い立ち、ちらりと確認する。
真っ暗なのか星が瞬いているのかはっきりしてほしい。
こいつは今どこにいるんだ? ベッドの側を通り掛かったところなのか? それともそうしようとしているところなのか? 一度読んだだけでは絵が全く浮かんでこない。
幸いにも部屋も暗かったので、闇に目が慣れている状態なので、薄らと見えるので、普通に歩く分には問題はなさそうだった。
謎の三連撃。この文章を読み返して違和感がなかったならやばいぞ。
私は由布と一緒に戦っていたときより、力が出ないような、変な違和感を感じていたけれど、たぶん、彼女も何となくうまくいかない何かを感じているようだった……。
今日の模擬戦はほとんどの人がうまくいっていない感じが強く感じられた。そんな中で、由布と遠山先輩だけはとても調子が良さそうだった……。
お互いの信頼感や相手を想う気持ちがお互いの力のバランスを取り合って、本来以上の力を呼び出せる……。
みたいな話を遠山先輩と末来さんがしていたけど、中村さんは終始不機嫌というか、うまく言い表せない不満がある、といった顔をしていた。
私は由布の星霊石に触れた、そして由布も巫女装束を纏う。
ふと様子を見ると、由布は激しい違和感のようなものを感じ、表情を歪ませる。
「…………っ」
「由布、大丈夫?」
変身を解いた由布が疲労困憊の顔で傍にやってきてつぶやく。
なんとなくだけど、いつもと違う感じを由布も私も感じていた。
これは ひどい。うちのサイトを見ているようなおっさんは『誰彼』の超先生を思い出すのだろうか(私は葉っ派ではなくバ鍵なので未プレイだが)。
>疲労困憊の顔
どんな顔だ。疲労困憊の体を打ち間違えたと信じたい。
>なんとなくだけど、いつもと違う感じを由布も私も感じていた
「いつもと違う感じがした」で不確かなニュアンスは充分伝わるだろう。ここまで余計なものを付け足さないと読み手にちゃんと伝わるか不安なのだろうか。そいつは読解力と筆力に難があるライターが陥りやすいパラノイアである。
「何か……起こっているのかな……」
「わかんないけど……何か……あるのかな?」
避難とかあったけれど、その後は何事もなく、建物も崩れたところ
などもなく、夕食の時間を迎えた。
ただ、由布の話によると学園もそうらしいけど、松籟会全体が
慌ただしい感じになっているらしい……。
>何か……
>何か……
>とか
>感じ
おのれはどんだけ自分の筆力と情景喚起力に自信がないんだ。
>避難とかあったけれど
和風伝奇作品を手がける前に、赤ペン先生に添削してもらった方がいいと思う。
由布と共に朝食を取り、部屋に返ってきて、由布は家に帰っていった、私はすぐに勉強をはじめ、恵が部屋に来るのを待っていた。
……。
学園寮から、いつもの登校ルートを歩く、正門は来客用であり、寮生である学生は皆、学園の裏側の道を常用している。
まだ学園に来て一ヶ月も経っていないけれど、なんだか不思議と馴染んでいる様な妙な気分。
お母さんはこの島のどこかにいる……。
私はお母さんを探しに来ているんだ……それだけは忘れてはいけない。
由布も恵もまだ出会ってから時間は経っていないけれど、大切な友達、でもまずはお母さんに会える道として、巫女になる事……。
申し訳ないが、何を言わんとしているのかさっぱり分からない。
「ホント、どういうことなんだろう……」
その後、夕食の時間にも遠山先輩は姿を見せず、御花会の人たちは何かが起こっていることを気にかけながら過ごした。
なぜこいつは「御花会の人たち」の心情や行動をそこまで断定できるんだ。全知全能の神か、でなければエスパーなのか。このように随所で一人称が似非三人称にすり替わっているのはホント、どういうことなんだろう……。
「な、なんだったの?」
私は中村さんの行動がまったくわからなくて、彼女の行動理由を色々と考えてみたけれど、
納得のいくところには到達せずに、校舎内に戻って廊下を歩いていた。
文章の頭でヒロインBの行動理由について思いを馳せていたかと思えば、しっぽではいつの間にか校舎に戻って廊下をすたすた歩いている。私の脳内映像では、校舎の外でうんうん唸っていた主人公がドギャーン! と瞬間移動して校舎内に現れているのだが、みなさんは違うのだろうか。
その後、戦闘時の反省点を遠山先輩や未来さんから説明され、
軽い戦術論なんかも交えながら、各自の力の使い方の鍛錬なんかをしながら過ごしていた。
未来さんが遠山先輩に目配せすると、遠山先輩が全員に解散の号令をだし、解散することになる。
いつもと大体同じくらいの時間かな、などと考えながら、
心地よい疲れの余韻に浸るまもなく、学園寮に戻らなければ、
夕飯の時間に間に合わなくなりそうだった。
>各自の力の使い方の鍛錬なんかをしながら
《「の」の連続》。全く関係ないが、『CROSS†CHANNEL』に「否定の連続」と揚げ足を取るヒロインに対して「お前はAT○Kか!」と突っ込むシーンがあったことを思い出した。
>鍛錬なんかをしながら
携帯小説でも書いているつもりなのか。和風伝奇の静謐な空気を作る努力をする気は微塵もないのか。
鼎っ! 鼎っ……しかっりしろ!
(クライマックスのセリフ)
ライターがしっかりしろ。
契約上のトラブルがあったのか、納期を最優先(延期したけどね)したのか、下請けに丸投げしたのか知らないが、風間由布、保科恵、三輪縁子、中村真琴を担当したライターは、上に挙げたような推敲すらしていない駄テキストを納品したことを恥だと思ったほうがいい。こんなのが未来永劫残り続けるんだぞ。頭を掻きむしってのたうち回りたくならないのか。
YATAGARASU STYLE
エロゲー業界において、キャラデザインを流行っているアニメ・漫画・ゲームなどからちょっぱってくるのはさして珍しいことでもない。某聖杯戦争ではアグリアスと不死のゾッドが鎬を削っている。我らが『アカイイト』も、ユメイさんは柏木さんちの三女の面影があるし、サクヤさんの髪型は(発売時期を考えれば)明らかにセイバーだ。だがYATAGARASUは格が違った。『ポケットモンスタ- ブラック・ホワイト』の登場人物であるベルをパクってくるまではいいが、そこに超昂閃忍の装束を着せるセンスが凄かった。アリスソフトと任天堂のコラボがこんなところで実現するとは。こんな下手物の組み合わせは常人には思いつかないぞ。
アオイシロ ああアオイシロ アオイシロ
人間五年も経てば価値観も変わってくるもので、最近になって(ちょうど『彼女と彼女と私の七日』をプレイしたあたりから)あれだけ嫌いだった『アオイシロ』の評価を改めなくてはと思いはじめた。極め付きの今さら感が漂うが、私は『アオイシロ』を酷評しすぎているのではないだろうか。いや、『アオイシロ』に対する印象は全くといっていいほど変わっていない。私にとっての『アオイシロ』は、ビジュアルが質、量共に素晴らしく、サウンドも和風伝奇に合った荘厳さでクオリティが高く、伝奇要素はケチの付けようがなく面白く、声優さんも熱演しているのに、テキストと脚本と人間描写の酸鼻を極める出来で台無しになった、悔やまれる未完成品である。しかし……①ビジュアルが素晴らしくて②サウンドもクオリティが高くて③声優さんの熱演があって④伝奇要素がずば抜けて面白いなら、それだけで評価されてしかるべきではないだろうか?
それにつけても『アオイシロ』の勿体なさよ。『レゾナンス』のプレイ中、そしてこの記事を書いている間に、五年前の憤懣やるかたない思いがふつふつと甦ってきたぞ。サクセスという如何にも安かろう悪かろうな会社にあれだけのマンパワーが集まっていたのは天が味方したとしか思えない。ううっ……それなのになぜ肝心要の人間描写とテキストがあんなザマになってしまったのか……。正真正銘、あとは御大が一心不乱にテキストを書いていれば、『アカイイト』とはまた趣の異なる名作の完成が保証されていたのに……。ぐうう、口惜しすぎて身が張り裂けそうになる……。上に挙げた要素を評価したらしたで、もどかしさで死にそうになる。アオイシロ……中途半端な追加要素を加えたPC版を既に出してしまったからもうワンチャンすらないのだろうな……。ああアオイシロ……アオイシロ……。
バイトの学生説
もし帽子やベルさんの担当がmadocaではなく西村悠一だったら、ごめんなさい。
madocaについては『白衣性恋愛症候群』を先日読破していた。ここまで「ご覧の有様だよ」ではなかったと思う。まだアンインストールしていなかったので30分ほど読み返してみたが、少なくとも日本語としては成立している。『白衣』のようなしゃべり口調の一人称なら騙し騙し書けるが、『レゾナンス』のような文語調で書こうとすると大惨事になるのだろうか? それとも『白衣』は他のスタッフがせっせこ手直ししたのだろうか? 西村悠一の作品は触れたことがなかったので、帽子ルートの途中で心が折れそうになったときに気分転換がてら『古色迷宮輪舞曲』の体験版をプレイしてみた。うん、テキストの質もエロゲーのそれとしてなら許容範囲内だ。そしてループ作品における王道のシチュエーションと凝ったシステムに興味を惹かれた。ゲーム性を追求した名作と聞いているので、積みゲーの候補として頭の片隅に残しておこう。普段あまりゲーム性の高い作品をプレイしないので(「紙芝居の何が悪い」論者である)、余計に興味が湧いてきた。
その他もろもろ
EDの手抜き感が凄い。専用曲が用意されていなくて単なるOP曲のFULLバージョンである。演出もしょぼい。本編で使用された背景(セピア調)とスタッフ名が淡々と表示されるだけだ。凝った特殊効果は何もない。
どのシナリオでもホモフォビアが皆無なのはよかったが……。
登場人物に男性が出て来ますが、男女間の絡みは
一切発生しませんので、あしからず。
ゲーム起動時の注意書きにこんな文面が表示される。そんな低次元のことで大威張りするのはそろそろやめてもらいたいものだ。「んなことを自慢してないで面白い作品を作る努力を少しでもしやがれ!」といい加減痺れを切らしているのは私だけじゃあないよね?
星彩のレゾナンス

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