素晴らしき日々~不連続存在~ 正史考察・解説 

この作品の正史(メインルート)における、主人公らを中心とした登場人物の行動をまとめている。

人格間には認識のズレがあり、新しい由岐や卓司は記憶を都合よく捏造しているので怪しいところもちらほらある。
佐奈実の血に死者の魂を吸い寄せる能力があること、他の世界線からの干渉はないことを前提とする。
過去編・本編開始前 ▲
沢衣村の近隣にある村には死者の魂が集まるという佐奈伎神社があり、家系の女は死人帰りの里の巫女と呼ばれ、死霊の呪いを操る力があると信じられ恐れられていた。やがてその村が廃村になり、佐奈伎の血筋を引く琴美が、沢衣村の神道系古流柔術の流れを汲む間宮の家に引き取られる。
琴美は古い価値観の残る村で気味悪がれて迫害されるが、浩夫は因習に捕らわれずに彼女と接して支える。二人は次第に愛し合うようになり、東京に駆け落ちして結婚する。やがて二人の間に皆守が誕生する。
浩夫が癌を患う。元々の持病で人工透析が欠かせないほどだった浩夫はさらに衰弱する。
琴美は浩夫を救いたい一心でカルト宗教の白蓮華協会に入信する。教祖の白連太郎は琴美の美貌と佐奈実の名前に目をつけ、教祖の血と佐奈実の血の結合で新世界に人々を導く救世主が生まれると嘯いて愛人関係を結ばせる。琴美は教祖と性交渉し、やがて羽咲と卓司を産むが、既に彼女に飽きていた教祖は子どもが双子だったので救世主の資格を失ったと言いがかりをつけて捨てる。浩夫はジャーナリストに転職して教祖のことを調査し、他の信者にも救世主を産むためと称して性行為を行っていたことを伝えるが、琴美には通じない。
琴美はさらに精神を病んでいき、皆守は琴美を浩夫と自分を捨てた裏切り者と思い込んで憎む。琴美と卓司は浩夫がやめるよう言っても羽咲への虐待を続け、それを許せない皆守は二人に暴力を振るう。
ある日、皆守が錯乱した琴美に刃物で襲われるが、反撃して逆に負傷させてしまう事件が起こる。皆守は浩夫の実家がある沢衣村に移されて生活することになる。間宮の祖母の家に住み、敏夫と由岐から古武術を習いながら日々を過ごす。
琴美は浩夫を救うのを諦めきれず、卓司を救世主として育てるべく英才教育を施す。2012年7月20日に世界は滅亡するので世界を空に還さなければならないと吹き込み、新白蓮華教会のホームページ作りを手伝わせる。一方で、躾として熱湯をかけたり風呂に沈めたりして虐待する。
三年後の夏、浩夫の癌が悪化して東京の病院に検査入院することになり、羽咲も沢衣村に預けられる。皆守は羽咲と由岐と三人で海に遊びに行った日、砂で城を作りながら話すうちに羽咲が卓司や母親に負い目を感じているのを悟り、自分がお前を守るヒーローになると約束する。
ほどなくして浩夫が息を引き取る。浩夫は遺言で、皆守に羽咲を守るよう書き残す。通夜は沢衣村で行われるが、その最中に羽咲が一人で抜け出し、天国に旅立ったという父親の魂に会えると信じて夜の山に登って降りられなくなる。皆守は以前に羽咲から向日葵の咲く道の先に何があるのか訊かれたことを思い出し、その山道を登って彼女を見つけ出す。羽咲を背負って山を降り、途中で羽咲にお礼として二体のうさぎのストラップのうち一体をもらう。
琴美は完全に壊れてしまい、羽咲を空に還して卓司に元々の力を返したら救世主として覚醒し、死と生の境を越えて浩夫も羽咲も生き返らせることが可能だと信じ込む。
羽咲はそのまま沢衣村に住むことになり、皆守は由岐と一緒に交流を深めていく。秋は紅葉の中を一緒に歩き、冬は雪だるま作りや雪合戦で遊び、年末は間宮の家で豪勢に祝う。羽咲が若槻商店の店頭に飾ってあったうさぎのぬいぐるみを気に入っていたので、皆守は由岐に協力してもらって手作りに挑戦し、春にようやく完成してプレゼントする。
夏に浩夫の一年祭が執り行われ、琴美と卓司が村を訪れる。夜に皆守たちは向日葵の坂道を通って山に登り、羽咲が成長したことを噛みしめつつ自分たちの将来について話す。そこに琴美と卓司が現れ、羽咲を空に還すべく襲いかかる。卓司は羽咲を崖に突き飛ばすが、由岐が飛び出して羽咲をかばい、墜落の衝撃から彼女を守って死亡する。皆守はナイフを持った卓司ともみ合いになり、拍子で卓司の胸にナイフが付き刺さる。皆守は動転してナイフを抜いてしまい、卓司は失血死する。皆守は死の間際の卓司に取り憑かれてしまい、由岐も皆守の身体に取り憑く。
皆守は羽咲たちを守れず卓司も殺してしまった無力感と罪悪感で卓司に主人格を奪われてしまう。羽咲は身体と心に深い傷を負って数か月の間外科と精神科に入院する。しばらくの間、皆守からもらったぬいぐるみが自分自身だと思い込み、最良の時に依存するように身体の成長を止めてしまう。琴美は卓司の死が受け入れられず、皆守を卓司として育て、学校関連の書類も間宮卓司の名前で提出する。敏夫は娘の由岐が命懸けで守った皆守と羽咲の面倒を見ていくことを選び、武術の道を諦める。
由岐が目を覚ます。
卓司は北校に入学した当初から城山、西村たちにいじめられる。その憂さ晴らしに、生徒や教師が陰口や噂話を書き込む裏掲示板「北校SAWAYAKA掲示板」を設立する。
希実香は入学当初から容姿と真面目で鬱っぽい性格のせいで目を付けられ、めぐの彼氏である城山が希実香を狙っていたこともあって、めぐと聡子からいじめられる。
ざくろが北校の希実香たちのクラスに編入してくる。ざくろは希実香と小学校での同級生だったので仲良くしようとするが、空気が読めないせいで希実香と一緒にいじめられることになる。ざくろは裏掲示板でも性格や容姿を叩かれ、イジメ相談関係の匿名掲示板に書き込みをするようになる。
めぐたちはC棟の屋上を彼氏との逢い引きといじめに使うために美術部を設立し、四人の数合わせのために希実香とざくろを入れて、瀬名川を名前だけの顧問にする。誰も来ない屋上でざくろへのいじめが続けられていたが、瀬名川は見て見ぬふりをする。
ある時、めぐたちが希実香のプレゼントであるざくろの黒い人形を奪って投げ合い、それを取り戻そうとしたざくろが屋上から落ちる事件が起こる。ざくろは運良く三階のひさしにぶつかって体育館の屋根に落ちて軽傷で済む。瀬名川と学校は事件が公になるのを避けたく、めぐの父親が学校の理事というのも影響し、事故として処理してもみ消される。C棟は閉鎖されてざくろへのいじめも一時的に止まる。
一年ほど前、卓司は城山たちに罰ゲームとしてプールの授業中にざくろの服を盗むよう命令される。卓司は命令通り盗んでくるが、次に制服や下着を無理やり着せられて西村から性的に嬲られる。卓司がみじめさから消えてなくなりたいと願ったときに皆守が目を覚ます。皆守は瞬時に、自分が卓司の中で生まれた「悠木皆守」という人格で、彼の人格を破壊して肉体から消滅させるのが役割だと認識する。古武術で城山たちを叩きのめしたあと、卓司を認識して痛めつける。服をなるべくきれいにして、教室でうなだれているざくろに返して立ち去る。
皆守が廊下でこれからどうするか考えているところで由岐が現れ、古武術でしごかれる。自己紹介され、一つの身体に複数の魂が同居している状況について説明を受ける。他に卓司や羽咲やマスターや間宮の家のこと、若槻姉妹のこと、認識のチャンネルを合わせて卓司や由岐に会う方法なども教わるが、人格の存在意義については言葉を濁される。
皆守は城山たちから麻薬をカツアゲするのを続けるが、そのことで卓司の名前が裏社会に知れ渡る。
宇佐美は好きだった隆信という男を別の女に取られて、亜由美は女子に壮絶ないじめを受けて、現実逃避からオカルトに傾倒する。数か月前の交通事故で能力に目覚めたと信じる亜由美が宇佐美にコンタクトを取り、前世のエンジェル戦士、大いなる災いアザース、物理特化符虫、アタマリバースにスパイラルマタイといった設定を二人で作り込んで妄想を深化させていく。 ※亜由美が女子にいじめられて犬をけしかけられて処女を喪失した、というのはあくまでざくろの妄想
木村は若者の薬物汚染について取材していて、ヤクザと麻薬の取引をしているめぐや城山たち、彼らから麻薬をカツアゲしている間宮卓司(皆守)に辿り着き、追跡調査を続ける。
敏夫はヤクザの用心棒をして集めた資金でBar白州峡を開き、マスターになって皆守と羽咲を雇う。
羽咲はマスターの援助を受けながら、自宅で皆守たちの、白蓮華アパートで琴美の世話をする生活を続ける。
卓司は北校の新校舎の下、土台部分のスペースに、漫画などを読んだりパソコンを使ったりするための秘密基地を作る。
由岐は暇つぶしで新白蓮華協会のホームページを更新し、インターネットで話題になっている言葉を予言で書きだすように改良していく。
2012/7/2 ▲
卓司が数学の授業をさぼって、家から自転車で持ってきた本を秘密基地へ運ぶ。ざくろは教室の窓からその姿を見かける。旧プールの前で皆守が現れて、卓司を痛めつける。漫画を燃やして五万円を用意するよう言う。
ざくろは休み時間に聡子から次の授業のノートを貸すよう言われて断れず、授業を休む羽目になる。廊下でどうするか考えていると、授業をさぼって徘徊している城山と沼田に見つかりそうになり、卓司を見かけた旧プール方面に行ってみる。旧プール脇で卓司を見つけるが、卓司は秘密基地のことがばれるのを嫌がって追い払おうとする。そこに城山たちが近づいてきたので、卓司はざくろをマンホールの下に匿ってやる。
ざくろは卓司の秘密を知ったので、代わりに教室からノートを取ってきて授業中に描いていた漫画を見せるが、反応が薄い。
卓司から秘密基地の部屋にも誘われる。ざくろは彼の不思議な雰囲気から、好きな童話の『不思議の国のアリス』を連想してついて行くが、部屋の現実的な光景を見ているうちに我に返って早々と帰る。
卓司はざくろにいつでも来てよいと声を掛け、ソファに座って憮然としているうちに眠気に襲われる。
【18:30過ぎ】
皆守がBar白州峡に出勤する。
【18:58】
皆守は羽咲に会わないうちに帰ろうとしていたが、彼女がバーに来店する。羽咲は皆守が取り合わないせいで不機嫌になる。皆守は羽咲を動揺させて皿を割る原因を作ったことと仮病で帰ろうとしたことへの罰でマスターから締め技を喰らう。
皆守はピアノでサティの曲を弾いておっさんの客から称賛を浴びる。マスターに客からのセクハラについて文句をつけると、なぜか性器を舐める舐めないの話になり、羽咲も話に乱入してきて騒然となる。皆守は馬鹿馬鹿しい日常を大切に思う一方、自分が消え去る人間であることを自覚して戒める。
ざくろは携帯電話でSNS、裏掲示板、イジメ相談の匿名掲示板を適当にチェックして寝る。
2012/7/3 ▲
卓司が一限から出席し、二限の授業後に秘密基地に篭もる。ソファで横になっているうちに眠気が襲ってきて意識を失う。
皆守がB棟の屋上で涼みながら『リスの檻』を読んでいるところで由岐が現れる。由岐は自分が切り離されつつあり、記憶の断片化が進んで羽咲や皆守を認識できなくなってきていることを語り、次はもう会えないかもしれないと告げる。また、皆守に自分が卓司を消し去るためだけに作られたと考えるのは辞めるよう言う。皆守は、自分たちは卓司が悲惨な現実から逃げるために生んだ存在で、彼が望んだ人格が由岐、自らの存在を消させるための存在が自分だと持論を語る。
ざくろは特に理由なく授業をさぼってA棟の屋上に上がっていたが、B棟側に卓司の姿を見かけ、階段を使ってそちらに渡る。
皆守はざくろが苦手なので引っ込み、由岐が応対する。読んでいた『シラノ・ド・ベルジュラック』や読書の面白さについて会話し、『猫と共に去りぬ』を貸してやる。ざくろは昨日とまるで違う声の調子や聡明さ、人当たりのよさに惹かれる。皆守は由岐のコミュニケーション力に改めて感心するが、そこで突然意識を失う。
羽咲が弁当を届けに来る。ざくろは羽咲とあいさつした後に教室に帰るが、本はそのまま貸してもらう。教室に戻って聡子とめぐと希実香で昼ご飯を食べていると、めぐから簡単にお金を稼ぐ方法がないか聞かれる。
卓司が秘密基地でカップラーメンを食べつつパソコンで裏掲示板を覗き、瀬名川に紹介された清川を承認する。以前ざくろへのいじめについて語るスレッドがあったことを思い出して確認すると、スレはまだ続いている。卓司は今度ざくろが秘密基地に来た時には漫画やアニメをおすすめして優しくしようと決心する。
食糧の買い出しに行こうとマンホールを出たところで、学校にいた羽咲(司と鏡)に見つかって話しかけられる。繁華街まで付いてこられるが冷たくあしらう。追いかけてくる羽咲の姿にデジャヴを感じ、兄にうさぎの人形を貰った思い出話をされるが、不快感を覚えて聞き流す。
放課後、ざくろは秘密基地にいるだろう卓司に会うために旧プール脇のマンホールに入る。暗闇の中で壁に「ビッチは死ね」と書き殴られているのを見つけ、言葉の不気味さと午前に会った時の印象との落差にショックを受ける。
卓司が買い出しを負えて裏の塀から学校に入り、入り口のマンホールの前に来たところで出てきたざくろに鉢合わせる。ざくろはショックを受けたままで、ろくに会話できずに帰ってしまう。
卓司が秘密基地のソファに座ったところで眠気に襲われ、新しい由岐に交替して帰宅する。
新しい由岐が帰宅するが、自室で皆守が突然目を覚まし、様子をうかがって隠れていた羽咲から話しかけられる。皆守は羽咲の「とも兄さん」という呼び方を拒否し、妹としても認めないでいると由岐が現れ、優しくするよう言われる。羽咲は由岐と数週間ぶりに会えたことで喜ぶが、皆守は由岐が切り離される間近だからこそ連続的に存在できると気付く。由岐から再度、羽咲に優しくできるのは皆守だけなので兄妹仲良くするよう言われ、それは違うと反論すると怒鳴られる。切り離された自分では羽咲の心を守れない、卓司という人格を消す事が役目というのは思い込みだ、だからもう少し彼女に優しくしろと諭される。
言い合いの途中で由岐が姿を消す。皆守はまた会えると羽咲のことを慰める。二人で温めなおしたご飯を食べる。
【22:01】
宇佐見がざくろのイジメ相談の掲示板への書き込みを見てメールを送る。「はじめまして……と言った方がいいでしょうか? 『石の塔での戦い』 この言葉に何か引っかかる事がある時は返事をください。」「たぶんあなたに大きな変化があると思います。それはたぶん良い事です。」
ざくろは寝る前に携帯をチェックして宇佐美のメールを読み、自分の変人を引き付ける性質にうんざりする。卓司の変化のショックもあって、空を覆う黒い影の憂鬱な夢を見る。
2012/7/4 ▲
ざくろは連日授業をさぼったせいで気分が浮つき、一限の終わりで教室を抜ける。B棟の屋上で『シラノ・ド・ベルジュラック』の原著を読む由岐(卓司)を見つける。こっそり写真を撮ったあと、『猫と共に去りぬ』を返して会話する。「そりゃ人間だからさ、片思いぐらいした事があるよ……うん」「こちらだけ愛してるのに……相手にはその思いが届かない……とか、そういう経験はあるよね……」
ざくろはますます卓司に惹かれる。由岐に『シラノ・ド・ベルジュラック』を貸してもらう。
ざくろが帰ったあとに皆守が目を覚まし、羽咲が弁当を届けに来る。由岐がうさぎのぬいぐるみのほつれに気づき、裁縫セットを使って直してやる。今の異常な状態の元凶が琴美かどうかが話題になるが、羽咲が話を打ち切る。
由岐が姿を消す。羽咲はBar白州峡に向かい、皆守はそのまま授業を消化する。放課後はさっさと帰宅してゲームをやるつもりだったが、裏庭から城山たちの声が聞こえたので顔を出す。一通り痛めつけて、三人で使うつもりだった覚醒剤をカツアゲする。
皆守はいつも通り公園の公衆便所でカツアゲの成果を流したあと、駅に向かう途中で誰かに尾行されていることに気付く。横道に入って尾行者(木村)を捕まえる。詰問して持ち物から名前と雑誌のライターであることを確認し、麻薬を処分している証拠を握られているのを把握して、見つけたカメラをすべて破壊する。そのまま口封じしようとするが、腕時計に仕込まれたカメラのフラッシュを喰らい逃げられる。
帰宅する。羽咲のいないうちに思いっきりレトロゲームをする予定だったが、直後に羽咲が帰宅する。彼女を追い払うために、忍者になって妹を監視するエロゲーをプレイしている、毎日やってる、妹を調教するシーンがある、これから事に及ぶから席をはずせと言うが、逆に興味を持たれてしまい、冗談だと伝えると怒られてリセットボタンを押される。
ざくろは携帯で盗み撮りした卓司の写真を見てひとりで盛り上がり、就寝する。
2012/7/5 ▲
ざくろが好きな声優のCDを買うために電車で杉ノ宮に向かっていたところ、行く当てのない由岐と偶然出逢う。昔読んだ本の話で盛り上がり、また本を貸してもらう約束をする。「阿刀田とか……もちろん筒井康隆とかも好きです。あと星新一とか……」「今度もまたイタリアの作家なんだけど、ブッツァーティって人の短編集でね。この前読んですっごく面白かったからさ」
電車が終点の遊園地前に着き、ざくろは勇気を出して卓司(由岐)を連れて電車を降りる。遊園地でデートをし、一緒に絶叫系の乗り物に乗ったりボートを漕いだりする。
帰りの電車で、携帯プレイヤーでクラシックを聴き、由岐がピアノを弾ける話をする。杉ノ宮で降り、店で食事をすることになってBar白州峡に向かう。ざくろたちは由岐の払いでマスターの料理を食べ、由岐はピアノで好きな曲をざくろに聞かせてやる。
演奏中に皆守が目を覚ます。由岐のざくろともうまく話せるコミュニケーション能力に感心するが、皆守の心の声が聞こえるようになったという由岐から、実際は一人でいるのが好きだと言われる。一人上手という言葉から性欲処理や精子の話題に発展して言い合いになり、由岐は皆守と下ネタで盛り上がりながらざくろと軽快に会話する。
由岐と皆守はそのままバイトに入ってざくろは家に帰る。閉店時に羽咲とマスターと四人でオナヌーや属性萌え、皆守が誰が好きなのかについて議論する。
三人でじゃれあいながら帰路につく。由岐は皆守に、羽咲と会っている間にいつの間にか司として認識していた体験から、出来事を明確に記憶して記憶の連続性と意識を保てるよう努力していることを語る。また、自分が皆守を認識できなくなっても皆守は存在していてほしいと伝える。
帰宅後、三人で川の字になって眠る。誰に欲情するかしないかで揉める。皆守は由岐が眠る姿を初めて見て、由岐が引き離されつつあることを改めて実感する。羽咲はこのまま三人で生きていけたらよいのにとつぶやく。
2012/7/6 ▲
皆守が授業を受けるが、羽咲が教室まで弁当を届けにきて慌てる。弁当を毎度忘れることを注意されているところで美羽が話に入ってくる。皆守は美羽がドアを開けて羽咲が教室に入れるよう取り計らっていたことを知る。羽咲から家で夕食を取るよう言われて言い争っていると、古文の泉田に注意されて教室が笑いで包まれる。皆守は羽咲の存在と間宮卓司が学校で意外に受けいれられていることに驚く。
放課後、バイトに行こうとしたところで美羽に声を掛けられ、家に帰るよう妹から言われていたと釘を刺される。さらに、四月の中旬ごろから既に羽咲が認知されていたことを聞き、学校が家庭の事情を考慮してくれていたと察する。
皆守はどうするか考えながら杉ノ宮まで歩いていたが、また尾行されていることに気付き、駐車場に潜んで待ち受ける。木村をあっさり捕まえて再度カメラを粉砕する。木村は卓司の身辺を洗い、父親は間宮浩夫ではなく白蓮華教会教祖の白蓮太郎と琴美の隠し子であることを突き止めたと白状する。皆守は木村を痛めつけて調査を諦めさせるつもりだったが、警察が見ていると嘘をつかれて隙を見せたところにフラッシュを浴びせられて、振り切られる。
皆守は時間が無くなったのでBar白州峡に出勤するが、美羽からチクりのメールを受け取っていた羽咲が待ち構えている。羽咲が作ってくれた夕食を食べ、料理についてアドバイスする。開店前にマスターの策略で客からシャンパンを浴び、ドレスの女装に着替えさせられて仕事する。皆守はピアノを弾き、羽咲は歌を歌ってマスターの誕生日を祝う。
帰宅。皆守が風呂で身体を洗いながら、自分が消滅させるはずの卓司が根源的な支配力を強めていることについて考えていると、皆守の疑問を察した由岐が現れる。由岐は無意識にいるときや人格として存在しないときに、皆守や卓司の考えや行動が把握できるようになったと語る。また、この二日間で卓司が人格として存在した時間はないが、皆守の違和感については同感だと伝える。その後、二人の話し声を聞いた羽咲が水着で乱入してきてカオス空間になる。
皆守は四日間の眠りにつく。
2012/7/7 ▲
由岐が屋上でさぼっていると、ざくろが重箱に入れた弁当を持ってやってきたのでご馳走になる。ざくろはおいしいと率直に言われ、読書好きの父親の話をしたりして舞い上がるが、同時に傷害事件の噂や秘密基地での不気味な様子を思い出し、別人が同居しているような彼の性質を不思議がる。
ざくろが屋上から降りてきたところで希実香に出会し、卓司に夢中なことに嫌味を言われる。気まずい空気のまま希実香が去り、ざくろは声を掛けて久々に二人で話すか迷うが、結局そのまま教室に帰ってしまう。
2012/7/8 ▲
希実香とざくろは聡子とめぐにカラオケへと誘われる。ファーストフード店でだべっているうちに、めぐたちがカメラを回して希実香に下着を出すよう要求したり、おもちゃで愛撫しだしたりする。希実香はざくろに逃げるよう合図するが、ざくろは怯えて動けない。希実香は結局痴態を撮られてしまう。
店を出て、めぐからざくろのオナニーを撮ると言われ、映像を怪しいショップに売ることを見抜いていた希実香はざくろを連れて帰ろうとする。聡子が怒って希実香をのそうとするが、希実香は特殊警棒で殴りつけて反撃する。希実香は優勢に立つが、ざくろの撮影を見学するつもりだった城山、沼田、西村が現れる。希実香は抵抗して城山たちに怪我を負わせるものの、結局やられてしまう。
ざくろは聡子たちに連れ去られ、希実香を人質に取られる形で撮影に同意してしまう。言われるまま麻薬を服用し、駅前のロータリーの死角で、衆人環視の中全裸になっておもちゃで気持ちよくなっているところを撮られる。
ざくろは失神しているうちにカラオケボックスに運び込まれ、起きた後にめぐたちから歌って踊るよう言われる。麻薬で気分がよくなっているままのざくろは、裸にひん剥かれながら踊り続けてオナニーをし、その様子もカメラに収められてしまう。めぐはカラオケの店員を脅してざくろを犯すよう仕向け、ざくろも流されそうになるが、秘密基地で見た「ビッチは死ね!!」という卓司の落書きがフラッシュバックして急に恐怖に襲われる。全裸のまま土下座して許しを請う。
めぐたちは興が削がれて店を出て、ざくろは今日の撮影は合意だったことを念押しされる。めぐは城山から連絡がないことに苛立ち、ざくろは希実香を心配する。
帰宅後、ざくろは取り返しのつかないことをしたことで深く憂鬱になる。希実香に何度も電話を掛けるが繋がらない。
【23:10】
八つ当たりで宇佐美のメールに返信する。「はじめまして、私はチェシャ猫です。メッセージ読ませていただいたのですが、石の塔の戦いという言葉にまったくの身に覚えがありません。」「少し気になったんですが……私に起こる大きな変化とはなんでしょうか? 良い事とかいてあったのですが、少し気になります」
絶望したまま就寝し、再び空を覆う黒い影、世界の黄昏の夢を見る。
2012/7/9 ▲
希実香は昨日の怪我で欠席。
めぐと城山たちはざくろが逆らったことに罰を与える準備で、旧プールに赤インクを撒き散らした後、それをざくろがやったと瀬名川にチクる。
ざくろは憂鬱な気分のまま登校し、廊下で清川から、瀬名川がざくろを呼んでいて、何やら怒っていたことを伝えられる。職員室で清川に会うと、プールの赤インクの件で問い詰められる。ざくろは当然身に覚えがないが、昨日何をしていたのか詮索されたくないので自分がやったと認める。面倒を嫌う瀬名川から始業前にプールをきれいにすることだけ言われて追い払われる。
ざくろが旧プールの掃除を始めようとすると城山たちが現れ、明らかに自分を乱暴しようとしている空気を察する。城山たちにまず掃除を終わらせると言って、隙を見てマンホールの下に隠れてやりすごす。
その後もめぐと聡子からいじめを受ける。下着や体操着を隠され、スカートをハサミで切られ、休み時間にその格好でバレエを踊らされ、下着に切れ込みを入れて黒板に飾られ、放課後になると下着ごとスカートを奪われる。ざくろはクラスメイトが自分のことを見て見ぬふりをしたり嘲笑ったりしている状況に自己嫌悪が悪化し、みんな死ねばいいのにという暗い感情が芽生え始める。
人気が無くなるまでトイレで号泣したのち、雑巾を身に着けて帰ろうとするが、帰り道でめぐたちに見つかる。そのまま西村が運転するバンに押し込まれ、城山たちに殴られて気絶させられる。
気絶しているうちに杉ノ宮のラブホテルに連れ込まれ、城山と沼田に麻薬を使われながら犯される。麻薬とセックスによる快感と気持ち悪さで、自分のことを虫けらやミミズのように思う自己嫌悪が加速する。
ざくろが目覚めると、城山たちはホテル代だけ残して去っている。投げやりな気分でシャワーを浴び、嘔吐しながら家に帰る。
【23:01】
宇佐見がざくろのメールに再返信する。「『石の塔での戦い』 この言葉には身に覚えがないと言うお話ですが、それでも問題ありません。間違いなくあなたはわたしたちの仲間です。」「そして『良い事』の方ですが、それは人の死です。近いうちにあなたを悩ましていた問題が一つ消え去ります。」
ざくろは就寝前に呪詛を吐きながら宇佐美のメールを読む。あまりにもバカバカしい内容に毒づき、レイプで処女を失ったことに改めてショックを受ける。
2012/7/10 ▲
【01:21:25】
聡子が裏掲示板の「めぐとさとこの仲良しスレ」スレッドに書き込む。「さすがに、あれまずくない? なんか壊れたんじゃないの」
【01:22:16】
めぐがスレッドに書き込む。「いや、完全に壊れたんなら問題ないんじゃね?」
【01:25:25】
聡子の書き込み。「やっぱり、あれはやり過ぎかもよ。マジバレたら、停学とかじゃすまないかも。」
【01:26:16】
めぐの書き込み。「心配しすぎだってさwww」「もし仮にバレたって、口割らなければ問題なしww」
【01:28:25】
聡子の書き込み。「警察とかでも?」
【01:32:16】
めぐの書き込み。「警察とかねぇよwww」「あったって、言わなければ問題ないでしょwww」
ざくろは登校するが、レイプのショック、麻薬と不眠の影響で幻覚と幻聴に襲われる。神から汚された身体であることを侮辱されて、独り言で言い返す。
卓司はざくろが秘密基地に顔を出さず、基地のことをばらしもしないのが気になり、裏掲示板で「めぐとさとこの仲良しスレ」スレッドを調べる。聡子とめぐの書き込みからざくろに何かがあったことを知って教室に向かい、ざくろが席でうなだれているのを確認する。
【12:05】
卓司が教室の前で声を掛けるかためらっているうちに皆守が目を覚ます。皆守は四日間も時間が跳んでいることに恐怖し、存在感が強固になった卓司が新しい由岐を除く人格を消そうとしていると推察する。皆守は卓司に五万円を要求していたことを思い出し、チャンネルを卓司の意識に合わせて、怯えを隠しながら痛めつける。
皆守は平静を装って駅前のぷらんたんコーヒーに行こうとするが、突然意識が断ち切られる。卓司は教室に入れないまま秘密基地に帰る。
ざくろはふらふらと屋上に上がり、さらに幻覚を見る。卓司に非処女であることを罵倒されて、城山たちにカツアゲの対象として密告される。ざくろは勝手に卓司へ失望して最低だと罵る。彩名が姿を現して、無差別に悪意を振りまいていることを諫められる(?)。「そうやって落ちていけば楽? でも……ちゃんと目を開いた方がいい……」
【12:52】
彩名との会話中に宇佐美の追記メールを受信する。「たぶんあなたはずっと苦しんでいると思います。」「でも、あなたが苦しいのは、あなたの存在が正しいからにすぎません。正しいからこそあなたは苦しむ事になってしまいます。でも、あなたを苦しめる正しくない者は死にます。近いうちにあなたを悩ましていた問題が一つ消え去ります。」
ざくろは宇佐美のメールが後押しになって、自分の苦しみは周囲の人間が間違っているからだという思い込みが悪化する。
卓司が秘密基地の入り口で周りに人がいないか確認すると、屋上にざくろがいるの見つける。屋上まで会いに行くがざくろとは入れ違いになり、代わりに城山たちがフェンスを乗り越えてLSDを使っている姿を目撃する。
城山たちに見つからないうちに引き返す途中で羽咲(鏡と司)に出会う。卓司は司が皆守について話す言葉が断片化して聞こえ、鏡には心を読まれて授業のサボりを叱られたように感じ、呆然としているうちに羽咲が去っている。「何やってる……こんなところで」「あ、あのね…… に会いたいなぁ……って思って」「私は でしかないから……単に でしかないからさ……だからさ……」 ※とも兄さん、ぬいぐるみ?
城山はハイになって屋上のふちでけんすいしている際に、手を滑らせて転落死する。ざくろは廊下の窓から城山が落ちていくのを目撃し、卓司はそれを知ることなく秘密基地に戻ってソファで就寝する。
ざくろは城山が死んだことでいくらか気が晴れ、宇佐見のメールを信用して返信をする。「ありがとうございます……おかげさまで私を取り巻く不幸の1つは解決しました」「でも、私にはまだまだ沢山の不幸があります。それは解決しないのでしょうか?」
廊下に彩名が現れて忠告される。間違った道に進もうとしている、城山の死はざくろが考えてるような事じゃない、その選択はとても危険、沢山の人間の運命を左右する。ざくろははき違えた選民意識を刺激されるだけで取り合わない。
【15:33】
ざくろが学校から飛び出したところで宇佐美からのメールを受信する。「高島さんは間違ってます……」
ざくろはメールのタイトルを見て、裏切られて否定されたと思って怒るが、本文を読んで「間違い」の本当の理由を知る必要があると感じ、会うことを決心する。
2012/7/11 ▲
【00:20:46】
ざくろが掲示板の、城山の落下死について書かれた「転落事故について語るスレ」スレッドにコテハンで書き込む。「彼が死ぬのは必然。」
ざくろは名無したちから総スカンを食らう。「マジお前自重。」「てめぇが殺したんだろ」
【01:50:15】
ざくろの書き込み。「彼が死ぬのは始まりでしかない。」
【02:00:25】
ざくろの書き込み。「だって……これって予言通りなのだから……。」
ざくろは駅前で宇佐見と亜由美と待ち合わせる。彩名が現れるが、宇佐美のメールに書かれていた「導かれる者はかならず悪魔の妨害にあいます」という言葉を唱えて無視する。
宇佐見と亜由美が到着し、カフェバーに移動してなぜざくろに連絡したか話を聞く。自分たちは前世の仲間で、世界の危機を救うエンジェル戦士だった。終末の時「ハル・メキド」から世界を救ったが、大いなる災い「アザース」の力は強力で倒すまでには至らず、いずれ復活するので私たちは更なる力を得る為に転生の道を選んだ。大いなる災いは私たちに封印の呪いをかけたので、前世の記憶や力を取り戻す「アタマリバース」が完全に行われていない。さらに、負的衝動エナジーダウン現象化させて骨抜きにするために、身の回りの人間に物理特化符虫を忍ばせて「世界が滅んでしまえば良い」「自分自身が消えてしまえば良い」という悪しき考えを植え付けようとした。亜由美は数か月前に交通事故に遭ったことで力の一部を取り戻し、宇佐美に連絡をくれた。宇佐美と亜由美は東京23区の物理特化符虫を対消滅させた。脳がほとんど喰われている人間は狂ってしまったが、元々が邪悪だったからであり、私達を汚しておいて只ですむわけがない。宇佐美は前世で隆信という男と婚約者であり、今は邪悪な女に騙されているが、この戦いが終わったらすべてを思い出して結ばれる。
完全に正常な判断力を失っていたざくろは、二人の話から聡子たちのいじめ、レイプでの処女喪失、自分が卓司と結ばれなかったことなどを結び付け、都合のいい思い込みと現実逃避で二人を前世の仲間だと信じ切る。明日6時42分に、三人で前世の力を取りもどすために臨死体験をする儀式「スパイラルマタイ」を行うことを決心する。
【22:02:13】
ざくろが裏掲示板に「ビックハザードが来ます。」スレッドを立てる。「封印されたアザは物理特化符虫(外径魔法系暗黒召還虫)を使い、私達人類に悪しき考えを植えつけようとしてきた。それが人類の長い歴史に見られた狂王達(ヒットラー・ハーン・マリーアントワネット.etc)と我々(市民、革命軍、人民)の戦いの正体です。城山翼さんはその物理特化符虫に犯されていました。 彼は私を堕落(負的衝動エナジーダウン現象)させるためにアザがそう仕向けていたのです。なぜならば、アザはもうすぐに目覚めるからです。ビックハザードが来るんです。」
スレッドはざくろを茶化す書き込みであふれる。「ビックハザードこっちくんな」「ワロタ」「こ っ ち く ん な」
【22:21:13】
ざくろがスレッドに書き込みをする。「ふざけないでください!」
【23:30:15】
ざくろの書き込み。「ビックハザードは人ではありません。大いなる災いの事です。」
【23:31:45】
ざくろの書き込み。「アザースを止められる唯一の存在、エンジェル戦士を負的衝動エナジーダウン現象化させ、骨抜きにするために城山翼くんに物理特化符虫を忍ばせました。それぞれのエンジェル戦士にも同じ様に、物理特化符虫に操られていた刺客を送りました。ですが黄金の光エンジェルリムーバー、蒼き閃光エンジェルナイトの力により、結界内(東京23区)物理特化符虫は対消滅させられました。城山くんはすでに脳を喰われていたので、物理特化符虫が消え去り、狂ってしまって屋上から飛び降りてしまったのです。」
2012/7/12 ▲
【00:01】
ざくろが宇佐美からメールを受信する。「水臭いですよ、前世からの仲間に対して!」「明日は6時半に杉ノ宮駅の西口改札口としましょう。」
【02:10:05】
ざくろが裏掲示板の「ビックハザードが来ます。」スレッドに書き込む。「2012年7月20日に大いなる災いは訪れます。」
【04:18:25】
ざくろの書き込み。「こんな人数ではなく、多くの人間が死にます。」
【05:18:25】
「2012年7月12日にアタマ・リバースを行います。そしてみんな知る事になると思います。私が人間ではない事。そして世界が滅亡に向かっている事……。」
ざくろが浅い眠りから清々しい気持ちで目を覚ます。
【08:01】
ざくろが宇佐美からメールを受信する。「今日ですね。スパイラルマタイ!」「がんばりましょう。世界の命運は私たちに掛かっているのですから!」
【09:02:13】
ざくろが「ビックハザードが来ます。」スレッドに最後の書き込みをする。「もうすぐにビックハザードが来ます!」
待ち合わせまで時間があったので、感傷で北校を訪れて散策する。大いなる災いを退けた後の新しい世界を想像して悦に入り、新しく生まれ変わって卓司と結ばれることを期待する。屋上で再度彩名にちょっかいをかけられるが罵倒する。「がんばってね……スパイラルマタイ」「うるさい!」「あなたなんかに言われたくない!」
卓司が杉ノ宮駅前に出かけてアニメ声優のCDと本を買う。デパートの屋上で眠ったところで新しい由岐と交替する。新しい由岐はタワレコファンで洋楽の新譜を買ったと認識しているが、これは由岐が後で記憶に不整合が起きるようにわざとCDを買った記憶を残している。
夕方、ざくろは宇佐美と亜由美と落ち合うために杉ノ宮の駅前に向かう途中で卓司(新しい由岐)を見つける。最後のときに偶然出会ったことに運命を感じ、宇佐美の言葉を思い出しながら卓司と来世で結ばれるという想いを強める。卓司にキスをしてこれから起こることを伝える。「力……わけておきます……あなたには……」「空いっぱいの不安な言葉……」「だから……世界は」「終わる……」「ごめんね。ごめんこんな話……信じられないと思うけどね……でも守るから……」
会話の途中で宇佐美と亜由美が割って入り、儀式を行う予定の駅近くのマンションに向かう。
新しい由岐は帰りの電車で眠りにつき、卓司に交替する。卓司は屋上から由岐とざくろたちを見ていたと認識していて、ざくろの妙に自信に溢れた様子に胸騒ぎを感じて駅前に引き返す。
【18:30前】
ざくろたちがマンションの前に到着して儀式の時間を待つが、しばらくして宇佐美と亜由美が怯えて泣き出す。問い質すと、スパイラルマタイとは死すれすれの体験をするためにこのマンションから飛び降りる行為で、地面に着く瞬間に力が目覚めるはずだと説明される。ざくろは狂気に駆られて、尻込みすることなく怯える二人の手を引いてエレベーターに乗り、屋上へと連れていく。
屋上で宇佐美は死にたくないと泣き叫び、亜由美は押し黙って震える。ざくろは終末の時は近付いている、大いなる災いが降りて来ようとしている、勇気を出してと鼓舞し、宇佐美を叩き亜由美を恫喝して叱咤する。
ざくろを探していた卓司は、彼女たちが揉めている姿をマンションの下から目撃する。
【18:42】
卓司がざくろたちを止めるためにエレベーターへ乗り込もうとしたところで、ざくろが『シラノ・ド・ベルジュラック』の一説を唱えながら、二人の手を引いて屋上から飛び降りる。 ※ここで皆守たちの身体と激突した場合はDown the Rabbit-HoleⅠに分岐
卓司は三人の死体におそるおそる近付くが、この時にざくろの霊が皆守たちの身体に取り憑いてしまう。
卓司は落ちていたざくろの携帯で救急車を呼び、現場検証のために写真を撮る。人が集まってきたことで混乱し、携帯を持ったまま逃げ出してしまう。
秘密基地の部屋に籠もり、気持ちを落ち着けるために『魔法少女リルル』の漫画とアニメを見るが、ざくろの霊の影響で彼女が最後に見た映像とごっちゃになった幻覚に襲われる。ざくろの死体に絡みつかれる幻覚を見たところで意識を失う。
皆守たちの身体に取り憑いていたざくろの霊が、裏掲示板の登録情報を使い、卓司が持ってきていた自分の携帯で、死体の画像を添付したメールを22:44に予約送信する。「わたしはしぬ事によりせんしとしてうまれかわりました のはずですが いたいです みんなしにます 8にちごにしにます ぜんいんかならずしにます」
【22:30】
皆守が二日ぶりに目を覚ます。頭痛をこらえ、秘密基地の陰鬱な空気に辟易する。
下水道から出たところで、自分が紙袋とCDらしきものを無意識に持っていたことに気付きぞっとする。袋を投げ捨てようとするが、由岐が何か意図を持って買ったものである可能性を考えて、捨てずに持ち帰る。
【22:44】
裏掲示板の登録者全員に、ざくろの霊が予約送信したメールが届く。
【19:02】
清川が高島メールに返信する。「なんのイタズラですか? 高島さんのメールを装ってなんて不謹慎すぎます。あなたは誰なんですか。」 ※Down the Rabbit-HoleⅡによるとこの時間になっているが、最初の高島メールは22:44に届くので、その後のはずでは?
【22:52:25】
メールを受信した希実香は、ざくろの無念を晴らして聡子たちに復讐するために行動を開始する。裏掲示板に「なんかキタんですけど(lll▽ ̄)」コワヒ~」スレッドを立てて、以後はすべての人間が呪いで死ぬと書き込んで恐怖を煽る。スレッドは自分のアドレスにもメールが来たという書き込みであふれかえる。
皆守が6日ぶりに帰宅する。空白の時間に何があったか確認するべく、リビングのソファに紙袋を置いて電気を付けると、新しい由岐が現れて部屋に向かうのが見える。皆守は目から光を失って視線も定まらず、皆守の声も聞こえない由岐の姿に絶望と悲しみを覚える。
新しい由岐が紙袋からCDを取り出すと、買ったはずの洋楽の新譜ではなく人気声優のアニメソングだったので混乱する。鏡の嫌がらせと認識して見当違いの番号に電話をかけて会話する。皆守は運命を受け入れる覚悟をしていたつもりだったが、由岐の姿を見て孤独と寂しさに襲われ、ベッドに横になって声を殺して泣く。
由岐は記憶の不整合で存在に亀裂が入り、かろうじて連続性を取りもどす。泣いている皆守を認識し、そっと抱きしめてやる。皆守から創造主に抵抗して自分を見つけたことを褒められ、お前がいなくなって悲しかったから泣いたと言われて、自分も泣きそうになる。皆守は自分は弱い人間で単なる役立たずだと言うが、由岐はそれを否定し、この世界で自分が知る限り一番強いので安心するよう伝える。
由岐から卓司の情報を共有され、一緒に今後の方針を決める。卓司は今日、自分たちの世界そのものが変わるような経験をして、強烈な意思でその記憶を否定している。由岐もその記憶だけは全く見えない。由岐は切り離されている間もその事件の調査を出来るよう心構えをする。お互いに情報交換できるよう、自室のノートにメモを取ることを習慣づけ、メモをこまめに取る訓練をする。
皆守は卓司に甚大な影響を与えてここまで状況を変えてしまった事件が何なのか考えているうちに意識を失う。
2012/7/13 ▲
【01:40:45】
聡子が「なんかキタんですけど(lll▽ ̄)」コワヒ~」スレッドに書き込む。「言いづらい事だけど……あのメール本当に高島ざくろのものだと思う……。私あの人のアドレスが携帯に入ってるから分かる。 誰が使ってるかまでは知らないけど、メールを出してるのは高島の携帯。」
【01:42:25】
めぐがスレッドに書き込む。「あれ間違いなく高島のメールだよ。 だって同じアドレスだし……あの子が持っていた携帯のカメラの写りと同じだもん。」
【01:46:48】
聡子の書き込み。「聡子だよね……。私も分かる……あれ間違いなく高島のメールだよ。だって同じアドレスだし……あの子が持っていた携帯のカメラの写りと同じだもん。」「高島生きてるの?」
名無しが高島はたしかに死んだと書き込む。
【03:12:48】
聡子の書き込み。「怖いよ……私……どうしよう。」
【03:22:25】
めぐの書き込み。「たぶん高島は私達の事恨んでるから……あのメールってやっぱり幽霊なの?高島の幽霊なの?」
【03:29:18】
聡子の書き込み。「私達だけじゃないわよ……元々はクラス全員でやった事でしょ……なんで私達だけ……。」
【03:36:33】
聡子の書き込み。「秋子とかえりとか、クラスの他の人にはあのメール来てない。」
名無したちから糾弾される。「あんたらが原因か! 高島の霊を鎮めるために死んでください。」「高島の呪いを受けるのはお前達で十分。」
【03:52:32】
聡子の書き込み。「私こんな事になるなんて思わなくて……思わなかったから……。」
その後、スレッドではざくろの過去の書き込みの検証が行われたり、ざくろと同じく2012年7月20日に世界の滅亡を予言している新白蓮華協会Webbot研究所のURLが張られたりして盛り上がる。
皆守が羽咲に起こされ、一週間ぶりに会えたことで泣かれる。卓司は一人で目を覚まし、新しい由岐は若槻姉妹に起こされたと認識している。
遅刻しそうになったので、羽咲が持ったお盆で朝食を食べながら登校する。北校の校門の前まで一緒に歩き、羽咲はこれが最後になるかもしれないと不安がるが、皆守はまた会えることを約束する。「もちろんだ……俺が嘘言った事あるか?」「わりかし……」「でも、この約束は絶対だ」
羽咲と別れて校門をくぐろうとしたところで意識下に引っ張られそうになる。由岐に話を聞いていた皆守はすんでの所で踏みとどまるが、新しい由岐の認識に支配されかけて混乱する。
教室に入るとクラスが異様にざわついている。美羽に声を掛けられ、クラスメイトの女子からざくろの集団自殺について聞かされる。皆守は新しい由岐の世界に侵食されそうになる。
HRが始まり、清川からもざくろが死んだことを告げられたところで、今度は卓司の認識に襲われる。皆守は卓司を完全に消し去るべく、彼の世界にチューニングを合わせて、恐怖をこらえながら徹底的に暴力を振るい、自己否定させるために自殺へと誘導しようとする。とどめに蹴り飛ばそうとしたところで完全に意識の底に引き込まれる。同時に封印していた沢衣村での事件の記憶の一部を垣間見て、由岐から羽咲を守ってここから先に行けというメッセージを受け取る。
卓司が一限の物理の授業を受ける。卓司は混乱から、ざくろはいじめで殺された、自分と同じだった、秘密基地に来たのは最後のメッセージで自分に助けを求めていたと確信に至る。休み時間になり、気分が悪いまま廊下に出ると羽咲(司と鏡)に出会す。自分が誰かわからないのか訊かれるが、意識が朦朧として答えられない。
一限の終了後、新しい由岐は人の死で盛り上がる教室の空気を嫌ってB棟の屋上でサボろうとする。彩名と出逢い、『空飛ぶ二十面相』と『純粋理性批判』を読みつつ雑談し、昼休みまで時間を潰す。「だってあなたは女の子という事になっているんでしょう?」「ただ、私の記憶だと友達というほど話した事はないと思うけど?」「終わるから……だから…帰る」
羽咲(司と鏡)が昼ご飯を持ってきて、一緒に食べる。
新しい由岐がぶらぶらと歩いていると3組の教室の前に着く。ざくろの教室だと思い至り、体育の授業中で人がいなかったので中に入る。花瓶が飾られたざくろの席を見ていると卓司に意識を完全に奪われる。卓司はざくろの机を本人に見立ててセックスし、机の中に射精する。その後、机を調べると落書きがあり、「スパイラルマタイ」「アタマリバース」などの他に「2012年7月20日……世界が終わる」という記述を見つけて衝撃を受ける。それは琴美が「世界が空に還る日」と予言していた日付と一致していた。
3組の担当である瀬名川にやにわに声を掛けられ、ざくろの机の前で何をやっていたのか訊かれる。新しい由岐が、自殺する直前のざくろと会って話をしたことを伝えると清川は取り乱す。どんな話をしたのか問い詰められ、空が不安な言葉で溢れている、ざくろが世界を守るといったよくわからない話をされたのを伝える。清川はいじめを見て見ぬふりをしていたことをチクっていなかったか怯えていたが、安心した様子を見せる。新しい由岐は清川に教室から追い出される。
再び卓司の意識が強く表に出てきて、混乱したまま秘密基地の部屋に帰る。『魔法少女リルル』の漫画やアニメを見て気分を落ちつけようとするが、昨日ここでざくろの幽霊を見たことを思い出し、怖くなって下水道から飛び出す。プール脇で新しい由岐が現れ、頭痛を堪えながら会話する。「というか……どこから出てきたのかね……」
由岐から逃げて再度下水道に入ると、貯水タンクで彩名に出会して話しかけられる。「人は……誰一人として、経験としての死を迎える事は出来ない」「死を想像しないものは、永遠の相を生きる」
彩名が消えた後、拾って放置していたテレビにざくろたちの幻覚が映り、さらに壁に描いたリルルの落書きに話しかけられる。校外で怪物(ショゴス)やざくろの死体に襲われるビジョンや、胎児の夢を見せられる。「卓司くんは救世主になるため生まれてきたんじゃないのかな?」「卓司くんの兆しを……」「至らせるために……」「終ノ空」「それは……世界が空に還る時」
2012/7/14 ▲
卓司が新校舎の下で目を覚まし、ポケットに自殺の現場から持ってきてしまったざくろの携帯が入っていることに気付く。ざくろのことを知るためにメールをチェックし、宇佐美とのやりとりを把握する。秘密基地のパソコンで聡子とめぐのスレッドをさらに調べ、ざくろが屋上から転落した事件の詳細や瀬名川がいじめを黙認していたことを知る。ざくろの携帯に彼女の髪の毛と頭蓋骨の欠片がくっついているのに気付き、ぞっとしながらも回収する。
卓司は取り憑いたざくろの霊と琴美の狂信的な教育のフラッシュバックが影響して精神を病んでいく。母と世界の意志を曲解して救世主としての使命に目覚める。世界が自分の思い通りになると強く信じることで、由岐や皆守に対しての支配力がさらに強くなる。
卓司がざくろの携帯を使い、前回送ったメールと同じ文面で掲示板の登録者宛に15:33に予約送信する。「わたしはしぬ事によりせんしとしてうまれかわりました のはずですが いたいです みんなしにます 6にちごにしにます ぜんいんかならずしにます」
※この後に授業に出席するのでたぶん予約送信
めぐ、聡子、瀬名川にメールを18:01に予約送信し、以後一時間ごとに同様のメールを送信するよう設定する。「いたいいたい いたい いたいいたいいたいいたい」
卓司がクラスに行くと、掲示板から伝播したWeb Bot Projectや7月20日に世界が終わる不穏な噂で盛り上がっている。
丸一日意識が飛んでいた皆守が目を覚ます。すぐに卓司の存在感に飲み込まれそうになり、卓司に掴みかかると、2012年7月20日、佐奈実琴美、白蓮華協会教祖の予言、空へ還る、双子、救世主引き裂かれるといった沢衣村の事件に関する記憶が断片的に流れ込んでくる。卓司が皆守に意識を向ける。皆守はたった一日で様子の変わった卓司に恐怖し、虚勢を張って二十万円を請求するが、卓司は動じない。西村たちは卓司に二十万あげると言われたかと思えば独り占めすると凄まれて混乱する。
卓司は皆守のことを、自分が救世主に目覚めるために母が遣わした障害だと認識し、屋上へ連れ出す。皆守は自信に満ちた卓司、転落すれば死ぬ場所という沢衣村の事件と似たシチュエーションに不安を感じる。皆守は大見得を切って卓司に襲い掛かるが、皆守の古武術の経験を無意識に利用した卓司に関節を破壊され、反撃するも返り討ちにされてしまう。卓司はやられながらも妄想ごっこは終わりだと毒づく皆守に感心し、皆守の心を完全に屈服させられるようになったときに救世主として至ることを理解して高笑いする。
新しい由岐に交替し、羽咲(鏡と司)と屋上で弁当を食べる。羽咲から、ざくろが死んだのは7月20日の世界滅亡に備えるためという噂が匿名掲示板で流れていること、学校の裏掲示板があることを聞かされる。新しい由岐はざくろや城山の死について調査を開始する。
教室に戻り、潔にフリーメールのアドレスを渡して裏掲示板のアドレスを教えることと紹介者になることを頼む。代わりに合コン(卓司の意識だとダーク系のDJパーティ)に参加ことを承諾する。
ざくろのことを調べるために3組の教室に向かう途中でやす子に会う。世界が今月の20日に滅びるのか、世界の終わりが近付いているのは本当なのか聞かれ、ざくろたちの死体の写真が添付されたメールを見せられる。写真は第三者の視点であること、撮影者の影が映っていることなどからいたずらだと説明し、近い将来に滅びることもあり得ないと言う。
3組の教室でざくろの机を調べ、彫られた落書きを見つける。かすれた部分を探偵セット(おそらく琴美が子どもの卓司に買い与えたもの)の微細アルミニウムで浮き上がらせて「間宮くん」を解読し、ついでに机に付いていた指紋(昨日自分が付けた間宮皆守の指紋)を採取しておく。その様子を意識が残っている卓司が目撃する。 ※机の中にあったぬるぬるしたものは、昨日射精した自分の精液
卓司を探しに屋上へ行き、彩名と会う。「ご精が出ますねぇ」「はい、精液出しまくりです。水上さんに合わせてみました」
彩名に卓司の影を追うよう言われ、中庭から人影が旧プールに向かうのを認識してそちらに行く。旧プールの前で卓司が現れ、新しい由岐は気分の悪さに耐えつつ会話する。「それって無味無臭な薬物なのかなぁ? すごく値段高くない?」「どうしたの? まるで心が読まれて驚いているみたいだけど……」「なるほど……高島さんの机にボクの名前ねぇ……そんなもの良く見つけたね」「たしかにボクは君の事を赤の他人とは思えないんだよ……」「殴られるのは好きじゃないんだよ」
新しい由岐は卓司に心を読まれたと思って恐怖を感じ、卓司は救世主の能力が覚醒したと勘違いする。
卓司が旧プールの下に入ると音無と出会し、隠されたもの、境界線や終ノ空について話される。「人間はなぜ……いろいろなものを隠そうとするんだろう……」卓司は彩名の言葉と雰囲気に恐え、途中で気を失ってリルルと会話する。
新しい由岐が目覚めて帰宅する。家の前で卓司が現れて、一方的に話しかけられて去っていく。「君は体の人なんだ。ボクみたいに理を学ばなければならない。高次元の認識に向かい! 上りたまえ!」
自宅のパソコンで潔からのメールを受信し、掲示板への参加を申請する。しばたかついえ、生年月日は大永2年の487歳。
2012/7/15 ▲
卓司が家のパソコンで裏掲示板をチェックし、呪いのメールに対する生徒たちの怯えた反応を確認する。昨日新しい由岐が出した掲示板の登録申請を承認する。
卓司はざくろの自殺に責任のある瀬名川を救世主のための生け贄にすることを考える。ざくろの携帯を使って予言のメールを送信する。「きょうまたちがとびちります あたまがちだらけになります」
卓司が登校する。新しい由岐は遅刻して三限の終わりに登校したと認識。
卓司のクラスでは昨日と打って変わって誰もざくろの自殺や世界の終わりを話題にしないが、裏掲示板の登録者は呪いのメールが届くことに恐怖する。
羽咲は特に用もなく北校に行き、校門の前で、人格が皆守であることに賭けて中に入るか悩むが、背後の気配と微かなシャッター音に気づく。尾行していた木村を捕まえ、古武術の締め技を掛けて知っている情報を吐かせる。自分は若者の麻薬汚染に関する取材で卓司と羽咲に辿り着いた。卓司は城山たちからの麻薬のカツアゲでヤクザでも有名になっている。母親である琴美と白蓮華教会教祖の愛人関係も把握している。北校では卓司を中心におかしなことが起こっていて、城山は転落死して、ざくろは他の学校の生徒と飛び降り自殺した。北校の裏掲示板がネットでも話題になっていて、大事件に発展すると盛り上がっているらしいが、承認制なので詳細が確認できない。今年の7月20日に世界の最後の日が訪れるという予言をざくろ、白蓮華協会の教祖(のちに撤回)、間宮琴美が運営するWeb Bot Projectが行っていて、信憑性がにわかに高まっている。警察は元白蓮華協会教祖の愛人である琴美とその息子である卓司が事件の中心人物である可能性が高いと見て、動き出そうとしている。そこまで話したところでマスターが駆け付け、木村を気絶させてBar白州峡に連れていく。
バーで木村を蘇生させて話を続ける。ネットで、琴美が作って由岐が暇つぶしで改良していたWeb Bot Projectの予言が話題になっている。あれはインチキだが、今から消すとインチキである証明が出来なくなる。Web Bot Projectは今年の7月20日を惨事のピークと予見していて、災いから逃れるためにざくろたちがが自殺したと噂になっている。
裏掲示板の内容がいずれ外部に漏れて、住所を特定されて凸をされること危惧して、羽咲をバーで寝泊まりさせることにする。
4限の世界史の授業の開始時、卓司が授業を遮って世界の終わりについて語りだしてクラスの皆を不安にさせる。教師の飯田が卓司を注意するが、卓司は飯田を花瓶で殴り、予定していた清川の死とは異なるが呪いのメールでの予言を成立させる。メールを受信していた生徒はさらに恐怖する。
卓司が演説する。城山と高島は自分が救世主に生まれかわるために神が生け贄にした。世界はあと五日で終わる。救われない者は永遠に地獄の業火で焼かれる。次いで三つの予言をする。もう一つの死によって死の濃度はさらに明言される。多くの者がその死をもう一度目撃する。死者はすべての終局を語る。新しい由岐が現れて反論するが強く言い返せない。希実香と清川は隣のクラスでこの演説を聞き、清川は震えて怯える。
卓司は教室を飛びだし、彩名を振り切って秘密基地に向かい、マンホールの前で希実香に出くわす。希実香は卓司がざくろの呪いを終わらせて人を助けるつもりならナイフで殺すつもりだったが、瀬名川が死ぬ運命にあることを聞いて思い止まる。その後も希実香の演技を交えた瀬踏みは続き、聡子とめぐがすぐに死なないことは納得できないが結局卓司の手下になる。希実香は卓司の命令で瀬名川の監視をするが、同時に卓司についても調査を開始し、どこかのタイミングで秘密基地のパソコンも確認して救世主の予言のからくりを把握する。
卓司が秘密基地のパソコンで高島メールを予約送信する。「あのときちゃんとみてたのに なにもしなかった しってるのに しらないふりした」「しーとうでいつもいじめられてたのを しってたはず そのかぎはせんせいからかりたものだから」
【11:23】
めぐと聡子を誘い出すために、本名で裏掲示板に「救われる者と救われない者」スレッドを立てる。「私は、今ここに立っている。救世主として。」「今こそ、救われる者と救われない者はふるいにかけられるであろう。」
【15:30】
新しい由岐が屋上で彩名と会話する。由岐が持ってるものなら見せてあげられると言われ、ざくろたちの死体の映像(卓司が見た記憶)を見せられる。「人はなぜ……いろんなものを隠そうとするんだろう……」「……世界には何人の魂があれば足りるか……」
新しい由岐が帰宅してメールをチェックし、掲示板の会員登録完了メールを受信して掲示板を覗く。「救われる者と救われない者」スレッドを読み、卓司がバカにされているのを見てほっとする。「警察に通報しまつた。」
「転落事故について語るスレ」「ビックハザードが来ます。」「なんかキタんですけど(lll▽ ̄)」コワヒ~」スレッドを読み、ざくろの書き込みを見つける。城山の転落事故に始まり2012/7/20に大いなる災いが訪れるという予言、ざくろが自殺した日の夕方から始まった高島メールについて知る。
「なんかキタんですけど」スレッドのレスに張られていたURLをクリックすると、新白蓮華教会Webbot研究所(羽咲と琴美の家)のサイトに飛び、ざくろの書き込みの予言と同じ7/20に世界の滅亡を予言しているのを見て驚く。所在地をプリントアウトしておく。
【21:00少し前】
卓司が秘密基地で、屋上に来て助けてほしいというリルルのメッセージを受信する。既に正気を失っている卓司は屋上への途中で不気味な影や城山の死体の、屋上でリルルと黒いリルルの大群が戦う幻覚を見る。
【21:01】
瀬名川宛に予約送信の高島メールが届く。「あのときちゃんとみてたのに――」
【21:06】
瀬名川が高島メールに返信。「違います。私は本当に知らなかったんです。赤坂さんと北見さんが部活で写生のため屋上使うから 私は鍵を用務員さんからあずかってただけなんです」
【22:01】
瀬名川宛に予約送信の高島メールが届く。「しーとうでいつもいじめられてたのを――」
【22:08】
瀬名川が高島メールに返信。「そこでイジメが行われたなんて本当に知らなかったんです。ごめんなさい高島さん」
【23:01】
瀬名川宛に高島メール。「おくじょうからわたしのにんぎようすてられた あれがないとわたし じょうぶつできない」 ※以後のちょうど一時間ごとのメールは卓司の予約送信と思しい
【23:09】
瀬名川が高島メールに返信。「人形が捨てられたのですか?」「もしかしたら忘れ物箱とかに入ってたりするかもしれません。明日先生が調べてあげます」
【23:13:12】
聡子が「救われる者と救われない者」スレッドで卓司に対してざくろの呪いを止めるよう書き込む。「もしあんたが救世主なら高島の呪いを止めてみなさいよ。」
【23:15:40】
めぐが同様に書き込む。「口では何でも言える。高島のメールを止めてよ。」
皆守が意識を取り戻すと、胴着を来た由岐に背負われている。風の涼しさや小川のせせらぎの音に疑問を持っていると、沢衣村にある間宮の道場裏に連れていかれる。時間の経過と身体感覚のおかしさから、ここが明晰夢の中であることを察する。
由岐からこのまま夢から覚醒しなければ次は卓司との最終決戦の場になっているはずだと言われ、夢から起きて羽咲と最後の時間を過ごし、安全な場所に避難させて卓司と運命を共にするか訊かれる。皆守は、意識下にありながら卓司たちの動きを知る術を得た由岐から明晰夢の操作を習うことを選ぶ。
皆守は由岐と手合いをするが、予測が働かないせいで攻撃を避けられず、こちらの攻撃はまったく当たらない。由岐から主観時間だけの意識の世界である明晰夢の意味を考えるよう言われ、痛みと息苦しさの中で、明晰夢の本質が強く思って恐怖を克服することだと気付く。一切の迷いを無くして由岐に攻撃を当てるのに成功する。
由岐から、自分たちの世界では強く思った方がイニシアチブを取ることを改めて説明される。今の卓司は自分が神の化身で世界が意志の通りに動くと信じている、もし勝てないと思う心が少しでもあれば絶対に勝てないのでやめておくよう言われる。皆守は卓司と戦う前に羽咲に会いに行くと返す。卓司が救世主であるならば、自分はそれを打ち砕く英雄になると心に誓う。
2012/7/16 ▲
【00:01】
瀬名川宛に高島メール。「かぎせんせいがもってた せんせいはしってた にんぎょうがほしい」
【00:06】
瀬名川が返信。「本当に先生は知らなかったんです。人形は明日必ず先生が調べますから。」
【01:01】
瀬名川宛に高島メール。「くろいにんぎょう わたしのくろいにんぎょう」
【01:33:32】
卓司が屋上から秘密基地に帰ってくる。パソコンで「救われる者と救われない者」スレッドをチェックし、めぐと聡子が釣れているのを確認して書き込む。「高島の呪いを止める? それはどういう事だい? 彼女のこれからの予言は有用だと思うけど?」
【01:36:20】
めぐの書き込み。「私とさとこにだけ来てる。あの、怖いだけのメールを止めて」
【01:37:32】
卓司が携帯にへばり付いていたざくろの遺髪と頭蓋骨を見て、除霊の儀式の信憑性を高める工作を思いつき、書き込みに返信する。「まず、今から杉ノ宮町駅のニュータウン通り沿い団地正面玄関から向かって左に5メートル歩いた場所に行け」
【01:40:40】
めぐの書き込み。「ふざけるな、そんな場所いけるか」
【01:41:12】
聡子の書き込み。「高島が死んだ場所なんて怖くていけない」
【01:43:32】
卓司の書き込み。「行くかどうかを決めるのはあくまでもお前達だ」「高島が死んだ場所に、彼女の髪の毛の束が落ちている。それを家に持ち帰れ」
自転車で自殺現場に先回りして、ざくろの遺髪を置く。
名無したちから、現場検証と清掃が行われたので髪束なんて落ちているわけがないと突っ込まれる。
【02:01】
瀬名川宛に高島メール。「すてられたにんぎょうがさむいっていってる わたしといっしょにかえるの」
【02:45:40】
めぐと聡子がざくろの自殺現場に到着し、髪を拾う。めぐがその場でスレッドに書き込みをする。「これどう見ても高島のだよ……。だって……髪の毛の元の部分に頭蓋骨がついてるんだもん……」
木村はネットの情報を基に張り込んでいたので、その一部始終を目撃する。
【02:45:42】
聡子の書き込み。「なんでこんなものがあるの?」
名無したちも書き込みを止めて成り行きを見守る。卓司はざくろの携帯の電話帳を使ってめぐに電話をかけ、ざくろの髪を持ち帰って荼毘に付し、教えた呪文を唱えるよう指示を出す。
【03:01】
瀬名川宛に高島メール。「わたしはにんぎょうをつれいくか おまえつれいく」
【04:01】
「くろいにんぎょうがない おまえつれいく」
【05:01】
「いっしょにきて」
【05:05:40】
めぐがスレッドにメールが止まったことを書き込む。「止まった……。」
【05:08:45】
めぐの書き込み。「家に帰ってきたら 間宮から電話があって あいつ私の電話番号なんて知らないはずなのに それで高島の髪の毛を燃やす方法と その呪いを封印する方法を教えてくれて 呪文となえたら 止まった」
【05:15:42】
聡子の書き込み。「二人で家で間宮の言われた通りに儀式した 本当に止まったみたい いつもなら4:01と5:01に来るはずのメールが来なかった。」
スレッドを見た多くの人間が、卓司の能力が本物だと信じるようになる。
【06:01】
瀬名川宛に高島メール。「いっしょにいきたいのでこれからいきます」
【06:06】
瀬名川が高島メールに返信。「だめ部屋にはこないで、お願い。来ないで頂戴。すぐに人形さがしにいくから。」
希実香は瀬名川を追跡していて、彼女が学校へ行ったことを卓司にメールで報告する。
【07:00】
卓司が自宅で目を覚ます。希実香のメールを確認後、瀬名川個人に自動送信していたメールを停止し、手動で高島メールを送信する。「せっかくあなたのへやにきたのに なんでいない?」
瀬名川を自殺に追い込む具体的な計画を考え、実現可能性を考慮して北校のC棟屋上から飛び降りさせるよう決める。
【07:09】
瀬名川が高島メールに返信。「忘れ物箱探したけどなかったみたい。でも、もう少ししたら用務員さんが来るから、そしたら人形の事きいてあげるから」
【08:03】
卓司が瀬名川宛に高島メールを送信する。「わたしからだない からだこわれた にんぎょうか あなたがひつよう」 ※描写はないがおそらく卓司の手動送信
【09:02】
卓司が高島メールを送信。「からだないからだない からだこわれた」
【09:00過ぎ】
羽咲がBar白州峡で目を覚ます。木村がドアを叩いて、重大情報をつかんだと言うので、バーに入れてやって料理とウィスキーを振る舞う。
羽咲はマスターと一緒に木村の情報を聞く。昨日ネットに杉ノ宮駅周辺で何かあるらしいという書き込みがあったので杉ノ宮に行った。北校の生徒でざくろをいじめていためぐと聡子が来て、何かを拾った。二人は麻薬の取引に関わっていて、北校のC棟でのいじめによる落下事故にも関与していた。マスターは木村の話を現時点では何も分からないと酷評し、羽咲と二人で腐す。木村の寝てないアピールから、モテなそうで恋人がいないという話になり、羽咲は木村からアプローチされる。羽咲は引きつつ受け流すが、マスターから冗談で羽咲には好きな相手がいると言われ、恥ずかしくなって買い出しに出かける。
卓司が登校すると、秘密基地の前に希実香・めぐ・聡子と数人の生徒が集まっている。希実香から、助けを求めて救世主様の元に下ろうとする者たちだと説明を受ける。卓司はこれから先に起こることを伝える。予言通り20日に世界は終わる。瀬名川はざくろの呪いを解いていないので死ぬ。信じる者は救われる、救いたい者は誰でもここに連れてきてよい、ただし一人でも予言を信じず、裏切ったら誰も助からない。 ※一人の女生徒が、やす子が卓司から予言なんてあり得ないと否定されたと人づてに聞いたことを語るが、やす子にそのことを話したのは新しい由岐
【09:20】
卓司がざくろの携帯から高島メールを送信する。「またしにます おくじょうからなかにわです あとすこしでほんとうにおわりです」
卓司がリルルの聖波動の気配を感じ、チューニングを合わせて幻覚と会話する。黒リルルと同様に偽物の卓司が存在していて予言の邪魔をしていると伝えられ、白リルル=ホワイトマターでできているという聖衣を渡される。現実では、希実香が白衣を渡している。
【10:02】
希実香が幻覚を見ている卓司に代わり、ざくろの携帯を持ち出して瀬名川に高島メールを送信する。「どこにいるの? わたしはおまえひつよう いっしょいけ」
この後のどこかのタイミングで、瀬名川に拾わせるためにC棟の屋上のフェンスの向こうにざくろの人形を置いておく。
【11:00前】
羽咲は駅前まで来たあとに、買い出しの店が12時にならないと開かないことに気づき、琴美の様子を見るために白蓮華アパートに向かう。木村は羽咲を心配して付いて行く。
【11:01】
希実香が瀬名川にメールを送信する。「いたい」
【12:04】
「いたいからだいたい」
【12時過ぎ】
新しい由岐に交替。電車で、昨日所在地をプリントアウトしていた新白蓮華教会Webbot研究所(白蓮華アパート)に向かう。
羽咲は木村とともに白蓮華アパートの部屋に入り、琴美の様子を見る。卓司が事件の黒幕なのか議論を始めるところで、木村が仕掛けていた振動監視センサーが反応する。木村は凸者が来た可能性を考慮して押し入れに隠れる。羽咲がドアを開けると、新しい由岐が立っている。「い、今……誰ですかっ」
羽咲は新しい由岐を部屋に招き、琴美の様子を見せたり卓司との関係について冗談を言ったりするが、反応の薄さで自分が知っている由岐ではないことを確信する。新しい由岐に、新白蓮華教会と白蓮華教会の関係や家族に起きた不幸、Web bot projectの現状と琴美がサイトを作った経緯について話す。
羽咲は新しい由岐を見送る際、困ったことがあったらここに来てほしいと伝え、兄さんに会ったらたまに来てくれと妹が言っていた、と言伝を頼む。「羽咲ちゃんはお兄さんとは会ってないの?」「……そうですね……兄さんとは会えないみたいなんで……」「たぶん……そういう呪いだから……」
新しい由岐は羽咲と別れた後、胸騒ぎがして学校に向かう。
羽咲は木村から、先ほどの話の続きで、絡まれた時の印象から卓司に罪はないと推察していること、彼は優しくて羽咲は兄さんと似ていると感じたことを伝えられる。また、大きな事件に発展すればスクープになるが、最悪の事態は避けたいと思っていることを明かされる。羽咲と木村は事件の謎を解くために北校に向かう。
【13:01】
希実香が引き続き瀬名川を監視しつつ、ざくろの携帯から高島メールを送信する。「わたししっぱい うでおれて のうでて いたい」
【14:03】
「ちがあるくとでて さむい さむいよ」
新しい由岐が自分の教室に入ると、卓司のことを調べようと机を探っていた希実香と鉢合わせる。希実香は間宮卓司と認識していた人物が別の名を名乗り、自分のことを知らない様子であることに驚いて逃げ出す。新しい由岐は希実香を捕まえるが、ナイフとフラッシュを使われて取り逃がす。希実香は別の人格のせいで卓司が救世主として中途半端だと認識する。
【15:01】
希実香が瀬名川に高島メールを送る。「ろうかですがたみた? すぐにいくよ」
【16:02】
「ろうかですがたみた? すぐにいくよ」
【17:01】
「いましょくいんしつでしゃがんでる あなたみてる」
【17:08】
瀬名川が高島メールに返信する。「そうだ。もしかしたらまだC棟の屋上に残ってるかもあそこのひさしとかに引っかかってるかもしれないから先生見てきてあげるから」
瀬名川は用務員室に行き、鍵を借りてC棟の屋上に向かう。
羽咲と木村は北校の校門前まで行く。無策で木村が中に入るが見回りの先生に見つかって追い出される。二人は卓司が学校にいるときに裏掲示板の動きが活発になるという木村の調査から、掲示板の管理人が卓司であることを推察し、秘密基地にあるはずのパソコンを調べることにする。下水道から侵入し、旧プールの貯水タンクを通って新校舎下のスペースに入る。発電機を見つけて電気をつけると、土台の中央でリルルの幻想を見ている卓司を発見して隠れる。卓司の意識がないことを確認して彼の自室に入り、パソコンにハードディスクを取り付けて、パスワードを集めたテキスト、掲示板の作業データなどをコピーする。
【17:58】
瀬名川は屋上のフェンスを乗り越えて人形を拾おうとするが、希実香がそのタイミングで高島メールを送信する。「あなたのうしろ ほらつかまえた」 ※Down the Rabbit-HoleⅡ 7/19では「2012/7/16 1:28」となっているが、前のメールの時間と不整合。フルボイスHD版では「17:58」に修正されている。
瀬名川はメールを読み、恐怖で屋上から墜落する。希実香は瀬名川が墜ちたのを確認して卓司にメールを送る。「大変な事が起きました」
新しい由岐は、裏庭に集まる不審な人影を追っていたところで墜落した瀬名川と鉢合わせる。「ま、まみぃ……ふぃ」「…たく……じ……くん」
瀬名川の散乱した荷物から彼女の携帯を見つけ、救急車を呼ぶ。希実香は瀬名川の様子を見に屋上から降りてきたところで新しい由岐を見つけ、携帯を奪う。卓司に報告のメールを送る。「大変な事が起きました」
【18:00】
卓司はメールの着信音でリルルの幻想から目覚め、希実香のメールを読む。羽咲と木村はその隙に旧プール脇のマンホールから校内に出る。
卓司は瀬名川にメールを送っていないことに気づいて慌てて外に出るが、希実香・聡子・めぐとたくさんの生徒たちに囲まれる。希実香は卓司のカリスマを高めるために、瀬名川を自分で追い詰めたのを隠して、卓司の指示通りに中庭で待っていたら彼女が落ちて来たと嘘をつき、救世主様の力に感動したと騒ぎ立てる。また、ここに集まっている生徒は卓司の力を本物だと信じるようになったと説明する。 ※実際は瀬名川はまだ息があり、この後に病院で息を引き取る
羽咲と木村は新たな死者が出て、このままだと不審者として犯人扱いされることに思い至り、慌てて学校の裏側の塀から外に出る。木村が先ほどの先生に再度見つかり、顔を覚えられるが振り切って逃げる。
卓司は記憶の不整合を黒波動の影響と思い込んで辻褄を合わせ、自分の力が高まっていることを実感する。めぐと聡子に、西村・沼田・飯沼を身体を使って抱き込んで、ヤクザから麻薬を強奪するよう命令する。 ※めぐと聡子が城山と3Pしたことを知っていたのは、7/10に屋上で城山が話していたのを盗み聞きしていたから
やす子には杉ノ宮のアニメショップで『魔法少女リルル』のポスターを買ってくるよう命令する。希実香が同行する。
警察が北校を閉鎖して捜査や生徒への事情聴取を始める。木村は事件に関与している人物として捜査の対象になる。
卓司の携帯にやす子から電話が掛かってきたので、下水道から秘密基地に来るよう指示する。清川が一緒にいて、瀬名川の怯える様子と希実香が見せた瀬名川個人宛の高島メールの内容で、ざくろの呪いとそれを解いた卓司の力を信じるようになったと語る。卓司は恐怖で縛るために清川を突き放し、自分の父親と性交渉してくるという無茶な指示を出し、出来なければざくろの呪いを向かわせると脅す。希実香とやす子には引き続き、自分の言葉を信じる者を秘密基地に集めるよう言う。
羽咲と木村はBar白州峡に逃げ込む。木村から裏掲示板の作業データなどをコピーしてきたことを聞き、羽咲は自宅のパソコンを調べてもらうためにスペアキーを渡す。また、家で卓司に出会い、もし皆守と名乗ったらここまで連れてくるよう頼む。木村に皆守が好きなことがばれる。
希実香の携帯にめぐから電話が掛かってきて、西村がヤクザに刺されたと報告を受ける。卓司は奇跡で治療するので西村を運び込むよう言い、めぐたちが奪ってきた覚せい剤と液体の麻薬(ヒロポン)を回収する。
清川は自宅で父親と無理やり性交渉したあと、全裸で痴態を晒して秘密基地に帰ってくる。
卓司は西村を部屋に運び、液体の麻薬を塗布したのち瞬間接着剤で傷をふさいで着替えさせる。重傷だった西村の傷が治っている(ように見える)こと、続く卓司の演説に聞き入ったこと、卓司がばらまいた麻薬の影響を受けたことで生徒たちがさらにヒートアップする。
卓司は清川を便所として扱うよう指示した後、疲れを感じて秘密基地の自室に引っ込む。買ってこさせた『魔法少女リルル』のポスターを眺めているうちに、リルルから屋上に神が降臨するというメッセージを受信する。
C棟の屋上に向かう途中に、城山の死体を探す異形やざくろの死体の幻覚を見る。屋上で幻覚のリルルと出会う。父である神と会うためには自分と肉体接触して人間の限界を超える必要があると言われ、フェラチオやふたなりセックスをする。
【23:38】
降臨した神の幻覚を見る。
新しい由岐に交替して帰宅する。パソコンを起動すると裏掲示板の登録に使ったアドレスに高島メールが届いている。「またしにます おくじょうからなかにわです あとすこしでほんとうにおわりです」
新しい由岐は、高島メールは掲示板に登録した人間に届いているだけだと気付く。掲示板のドメインを調べるが手がかりは得られない。
掲示板で「高島メール総合」「救われる者と救われない者3」スレッドをチェックする。高島メールにも全体宛のものとめぐ・聡子にだけ届いているものがあること、卓司の予言と高島メールの内容が実際の出来事に一致していること、卓司がざくろの呪いを解決したと祭り上げられていることを確認する。
希実香が信者をコントロールするために、乱交をけしかけて疲弊させたり麻薬を散布したりしはじめる(希実香ルートだとこの日に卓司から許可を取って開始する)。乱交できるうわさが広がり、学校外の人間も秘密基地に出入りするようになる。
2012/7/17 ▲
羽咲は昨日の事件の影響で寝付けず、マスターは気を使って店を休みにする。
警察は事件を他殺ではないと判断するも、薬物汚染が関係していることを把握して捜査を強化する。街のヤクザは昨日の西村たちの襲撃を受けて動き出し、警察の情報から木村の身柄を攫おうとする。木村はその情報を会社の人間から聞き、伝手を頼って誤解を解こうとする。
卓司の信者は秘密基地で乱痴気騒ぎを続ける。西村が死亡する。
木村はヤクザの誤解を解くのと並行して、七年前に何が起こったのか当時の新聞を調べ上げる。沢衣村の事件について知り、皆守を診断した医者に会って話を聞く。
休校の中、新しい由岐がカウンセリングを受けるために登校する。教室で清川に会い、恐る恐る名前を聞かれて水上由岐だと答える。「そ、そう……わ、分かったわ……そうよね……だって白衣着てないし……」
清川から、瀬名川がC棟の屋上でフェンスによじ登って何かをしようとして転落し、搬送された病院で息を引き取ったこと、校内でカメラを持った不審な人物(木村)がうろついてるのを他の先生が発見したことを聞く。瀬名川に何か悩みがあったのか訊き、ざくろの自殺が話題に出ると、瀬名川は怯えた反応をし、裏掲示板についてもわざとらしく知らないふりをする。新しい由岐は清川や学校側がざくろのいじめを把握していたことを察する。
清川が職員室に呼び出されて席を外す。新しい由岐は希実香が瀬名川の携帯を見て「こんな時期から登録してたんだ」「清川先生紹介したのも」「すごい数のメール」と口にしていたことを思い出し、清川も裏掲示板の登録者で高島メールを受け取っていることに気づき、卓司に感化されて信者になっている可能性に思い至る。
ふと清川の鞄を見ると、希実香に奪われた瀬名川の携帯があることに気付く。新しい由岐は由岐が残した「この事件は私が止めなければならない」という認識に従い、携帯を奪って自宅に帰る。
羽咲が目を覚ます。木村から電話があり、警察とヤクザから追われていて誤解を解くことに奔走していること、卓司は教師を花瓶で殴って怪我させていて、薬物を使用していた生徒が捕まれば名前が挙がるはずなのでいずれ捜査線上に上がるだろうこと、おそらく卓司が家に帰っていることを伝えられる。羽咲は家にいるのが万一皆守だった場合、羽咲がどこにいるのかわからないことに気づき、皆守に会いたいのもあって自宅に向かう。
新しい由岐は自室で瀬名川の携帯を調べる。メールが全て削除されていたので、サーバから再受信する。高島メールには共通のものと個別のものがあること、瀬名川が高島メールに誘導されてC棟の屋上から落ちたことを知る。自宅に着いた羽咲は、様子を確認して新しい由岐であることを察し、部屋の外から見守る。
新しい由岐は携帯のアドレス帳にざくろが登録されているのを見つけ、試しに電話を掛けると、卓司が机の引き出しにしまったざくろの携帯が震える。驚いて机の上にあった探偵セットの微細アルミニウムをこぼし、部屋中にある間宮皆守の指紋が浮かび上がる。新しい由岐はそれがざくろの机に付いていた指紋と同一であることに気付き、ざくろの霊か卓司が部屋に侵入して携帯を置いたと勘違いして動転する。
羽咲は由岐のことを心配して部屋の中に入るが、この部屋で羽咲のことを認知するのを拒否する新しい由岐は彼女を不気味な黒い影として認識し、恐怖で意識を失う。
木村は羽咲たちの自宅を張らせていた部下から連絡を受け駆け付ける。羽咲に沢衣村の事件について詳細を調べたことを伝える。羽咲は自分が生まれてしまったことがみんなを不幸にしてしまったと語るが、木村から由岐がそれを聞いたらどんな思いになるかと叱られる。木村は卓司の怨霊を断ち切らなければならないと言って羽咲を鼓舞し、ついでに彼女を口説くが、とも兄さんがいるので駄目だと振られる。
羽咲は木村の車でBar白州峡に行き、マスターからも叱られる。羽咲はマスターに愛されていると感じて改めて感謝する。木村は卓司のパソコンの調査を始めるために、羽咲たちの家に車で折り返す。
【18:00過ぎ】
卓司が秘密基地で希実香に起こされ、意識を失っている間の出来事について聞かされる。卓司は夕べ神の歌について力説しながら踊り狂っていた。信者は麻薬で眠気や疲れを感じずにめぐ・聡子と乱交に励んでいる。西村は動かなくなった。清川は卓司に連れていかれて悪魔を見せられて、「悪魔は救世主様と同じ顔をしている」「悪魔に携帯電話取られた」と怯えている。 ※新しい由岐が午前中に清川のバッグから携帯を取っている
卓司が希実香に改めて指示を出し、秘密基地を気化させた麻薬で満たし、信者に聖水と聖薬(麻薬)を与えて飢えと渇きを凌がせるよう言う。自室に引っ込んでリルルのポスターを見ているうちに昨日のことを思い出し、今日は屋上に誰かがいるのか気になって、梯子を使って直接屋上に上る。
屋上で彩名に出会す。卓司は彩名をリルルの影、黒リルルと認識して敵意を持ち、妄想の中でふたなりの彩名をいたぶって犯すが、彩名の魂に触れようとしたことで同一性にひびが入ってしまう。
【22:30】
皆守が目を覚ます。彩名から自己紹介され、卓司はおねんね中であること、彩名の魂に触れようとしたので意識に隙ができ、皆守が強い意志を持ってここに来たので意識を世界につなぎ止めていることを教えられる。皆守はとりあえず彩名に感謝を伝える。彩名からさらに、卓司は夜が明ける直前ぐらいまでは帰ってこないと教えられる。
皆守が羽咲に会うために家へ帰ろううとすると彩名が付いてきて、帰り道は気を付けたほうがよいと忠告される。明晰夢を扱うようになって卓司の行動がある程度把握できるようになったため、おおっぴらに校内を歩くのはまずいと察し、非常階段で中庭に下り、旧プール脇のマンホールから下水道伝いで外に出て電車に乗る。
家に入って羽咲を呼ぶが、気配がない。木村から声を掛けられて自己紹介され、羽咲の知り合いであること、彼女はBar白州峡で寝泊まりしていること、自分は間宮卓司を追っていて、卓司がめぐと聡子に出した指示や城山とざくろの死なども把握していることを伝えられる。
木村の車でBar白州峡に送ってもらう。羽咲は皆守にもう会えないと思っていたため泣きつかれる。皆守は羽咲に一言大事なことを言うために帰ってきたと伝えるが、その前に、自分の勝利を疑わない卓司を超えるためにマスターへ手合わせを依頼する。
バーが入っているビルの屋上でマスターと対峙する。皆守はマスターの苛烈な攻撃を避けることが出来ずボロボロになるが、羽咲が木村の静止を振り切って屋上にやってくる。羽咲からとも兄さんは自分勝手だ、一言なんていらない、もっと言葉を交わしたいと言われ、羽咲を守るのは俺だ、マスターと卓司を倒して必ず帰ってくると宣言して気を持ち直す。マスターの本気の当身を明晰夢で掴んだ感覚で先読みして避け、みぞおちに渾身の一撃を喰らわせて勝利する。
羽咲と二人きりにしてもらい、寝ころんだまま治療を受ける。俺は卓司より強い、絶対に負けないと再度誓う。
2012/7/18 ▲
羽咲が寝てしまったあと、皆守は羽咲をバーに運んで起こさないように抜け出す。木村に見つかり、自分に何かあったときは羽咲のことを守るよう頼む。卓司と対決するために北校の屋上に向かう。
屋上で彩名が現れ、死ぬのが怖いかどうか聞かれて答える。「死は恐いさ……でも死は誰にも訪れない……それは事実だが、そう分かっていても恐い……」「祝福が人を苦しめ、呪いが人を苦しめる」「そして祝福が人を救い、呪いが人を救う」
卓司が彩名を犯す妄想から目を覚ます。彩名から皆守や由岐のこと、それぞれの役割について語られるが、ご託など沢山だとはね退ける。自分は終ノ空への予還者で至るものだと宣言し、最果ての空の光景を見、皆守もそれを目撃する。彩名からなぜまだ空に還すのを始めないのか聞かれて、ここでやるべきことがあると答える。
皆守は卓司に名乗りを上げる。お前は世界の中心でも、救世主でも、母親の期待した人間でもないと現実を突きつけて怒りを煽り、攻撃の軌跡の先を完全に見切って腕を取り、地面に叩きつけて腕の関節を破壊する。
皆守がナイフで卓司にとどめを刺そうとしたところで、木村とともに駆け付けた羽咲の静止の声が聞こえて手を止める。卓司に隙を突かれて肉体の制御を奪われ、ナイフを胸に刺されてしまう。負けを認めた皆守は肉体が卓司のものに変わるのを感じ取るが、意識が途切れる直前、羽咲と一緒に家に帰り、もっと話をして、夏休みに沢衣村に行くことを約束する。卓司は相打ちで皆守にナイフで刺されたと認識する。
皆守が気を失い、卓司の人格が完全に表に出てきて、羽咲を振り払って自室に向かう。木村は羽咲を守るためにこの場から遠ざけようとするが、古武術で気絶させられる。
羽咲は卓司を追って梯子を降り、秘密基地を埋め尽くす人を目撃する。卓司を探していると希実香に見つかる。希実香は卓司の身辺調査をして羽咲のことも把握していて、計画の邪魔になるなら殺そうと考えるが、卓司が最終的にどの立場をとるのか神様に任せると決めて、羽咲に彼が部屋にいることを教える。
卓司は自室でナイフの傷を瞬間接着剤で塞ぎ、麻薬(聖薬)を服用する。皆守の不可解な強さについて動揺していると、羽咲が部屋に入ってくる。羽咲は卓司にとも兄さんを許して消えてほしいと訴えるが、卓司は若槻姉妹から罵倒されたと曲解し、黒波動の発生源と認識して敵意を向ける。男の信者を呼んで二人を犯すように言う。信者は当然羽咲(司)に手を出そうとするが、そちらではなくうさぎのぬいぐるみ(鏡)を犯して残酷に殺すよう指示を出す。麻薬でおかしくなっている信者はぬいぐるみを拘束して犯し、三角木馬と麻薬で責め抜く。羽咲は辞めるよう訴えるが、信者は聞く耳を持たない。
卓司は飽きを感じて薄汚れたぬいぐるみを見下ろすが、「ちゃんと壊さないと」「壊すんでしょ?」と挑発されたように感じ、土台の柱の高いところに磔にするよう信者に指示を出す。信者たちは羽咲の懇願を無視してぬいぐるみに杭を打ち付けて固定し、高枝切りバサミでバラバラにする。
羽咲が泣いていると、周囲がいつの間にか静かになっており、卓司から「司」と呼ばれたことで新しい由岐に交替していることを察する。新しい由岐は鏡を家に連れて帰るべく、ぬいぐるみを背負い、羽咲(司)を連れて長谷川さん家(若槻姉妹の家)に向かう。
電車が終わっていたので徒歩で家に向かう途中、新しい由岐はぬいぐるみに言い聞かせるように、鏡がランニングで肉離れしたときにおんぶして帰ったこと、死んだ犬のジョンの魂を追って坂を登り、帰れなくなって泣いていたのを迎えに行ったことの思い出を語る。羽咲は新しい由岐が浩夫の死と向日葵の坂道に関する思い出について話しているのに気付き、魂を乗っ取られて羽咲を認識できなくなっても皆守は皆守であることに涙する。
新しい由岐が長谷川さんにぬいぐるみを見せるが、当然ながら困惑される。鏡がいつの間にか人形にすり替わっていたと錯覚して混乱する。羽咲(司)に助けを求めるが、再び彼女を黒い影として認識する。羽咲は皆守を返すよう言うが、新しい由岐は理解を拒んで叫び出し、秘密基地へ逃げ帰る。
※Down the Rabbit-HoleⅡでは以下のような行動を取っているが、皆守の行動を考えると物理的に難しい
新しい由岐は黒い影から逃げて繁華街を彷徨い、人に絡まれて補導されかけて学校へたどり着き、疲弊して睡眠をとるために屋上に行く。
屋上で目覚め、彩名と教室へ行く。自分の机に仕込んだ五百円玉を回収しようとするが、斜め前の司の机に一昨日の教科書が入れっぱなしであることに気付いて駆け出す。 ※本当は誰の机だ
長谷川さん家(若槻姉妹の家)に向かい、部屋にカーテンが掛かったままなことに気付く。チャイムを鳴らしても誰も出ない。
家の自室に戻って冷静になり、ざくろの携帯に指紋が残っているのに思い至る。指紋の採集セットを使って、五つの指紋のうち二つはざくろの机で採取したものと一致するのを確認する。
教室に戻って彩名に会う。卓司の机から指紋を採取して、彼が黒幕であることを説明して会話する。卓司たちが現在どこにいるか考えるが、彩名の「間宮くんは混沌と友達になった」「そう、ないあらとほってっぷは暗いところが好きだから」という言葉から、以前姿を消していた旧プールに思い当たる。
旧プールに向かい、脇を調べる。マンホールの新しい傷痕やプールに不自然に溜まった雨水から、排水タンクに当たりを付ける。マンホールから下水道と排水タンクを経由して新校舎の土台のスペース(秘密基地)に着くが、そこで切り刻まれたうさぎのぬいぐるみ(手足を切り取られた鏡の死体)と泣きじゃくる羽咲(司)を発見して絶望する。
※It's my own Inventionでは、ぬいぐるみを壊したあとは以下のような流れになるが、皆守がぬいぐるみを背負って羽咲と長谷川さん家に向かうので、このルートだけの出来事と思われる
卓司が失血のだるさと疲れを感じて呆けていると、羽咲が逃げ出す。希実香は秘密基地の情報を知っている羽咲を逃がしてよいのか訊くが、卓司は気に留めない。
羽咲が逃げ出したあと、卓司と希実香は信者たちの乱交に加わらないのか訊いた流れでセックスやちんこへの興味について話し、流れでセックスをする。事後のけだるさの中、世界の果ての空が近づいているのを感じ取る。
【23:00ごろ】
卓司と希実香はやるべきことをやったと感じ、麻薬の原液を信者たちに振りかける。信者たちはただただ楽しそうに踊り狂う。
2012/7/19 ▲
卓司たちは秘密基地から梯子を登ってC棟の屋上に上がる。麻薬の影響で幻想的な景色、それぞれの終ノ空の風景を見つつ騒ぎ立てる。信者が屋上のフェンスをハンマーで破壊する。
羽咲は気が付くと北校の校門前に戻っている。彩名が現れ、自己紹介されたあとに終ノ空を見に行くのか訊かれる。「そう……あなたのお母さんが恋いこがれた空……」「この世界の臨界点……」「魂が、何度もやり直すための……地点……」「出口を見つけないかぎり……何度でもやり直す……」
羽咲は校舎に入り、マンホールから下水道を通って秘密基地に入る。人の気配がないが、彩名のヒントで卓司たちは空が見える場所に移動したと察し、鉄梯子を見つけて登り始める。
卓司が信者たちに最後の演説をし、空に還るよう促す。「ここが……空の最後だ」「ここが世界の限界……」「……空へ還ろう……」
めぐと聡子を始めとした信者たちが屋上から飛び降りる。羽咲が屋上に出たタイミングで、希実香が卓司へここ数日がとても楽しかったことを伝えて飛び降りる。
卓司は事ここに至って羽咲を認識し、最後の言葉を残して飛び降りる。「どうやら……羽咲はこの時間に永遠にとどまる気だね……」「ボクは先に行くよ……この廻天の世界で……」「また、新たなる肉体に宿る魂として……」
羽咲は無我夢中で飛び出し、皆守の身体が墜ちる寸前で足を捕まえて、必死で兄さんと呼び掛ける。
皆守は一瞬の間に長い夢を見て、羽衣村で羽咲に再会してから一年祭の事件までを追体験する。
夢の終わりに、C棟の屋上を模して作られた明晰夢の中で由岐と再会する。由岐は皆守の成長した姿を改めて目にして、皆守はかつて大きく見えた由岐の身体が小さく見えて感傷的になる。由岐は皆守に今しなければならないことを思い出したか問い質す。皆守は、羽咲との約束を守れなかった、俺は弱い人間で負けてばかりだと弱音を吐くが、由岐は皆守の尻を叩いて鼓舞する。「こんなのさ……演出なんだろ?」「ヒーロー登場ってそういうもんなんだろ?」「約束したんだろ……羽咲ちゃんと」「羽咲ちゃんは最後まで信じてるぞ……」
由岐は別れの予感に涙をこらえつつ、自分が卓司を連れていくことを約束する。皆守の手を取り、いつでも側にいることを伝えたあと、皆守を羽咲の元に送り出す。「ヒーローが最後にヒロイン守れないでどうすんのさ!」「羽咲ちゃんが信じ……私が信じた……皆守」「勝つんだろ」「運命に!」
皆守が意識を取り戻す。羽咲が引きずられて一緒に落ちそうになっていることに気づいて手を放すように言うが、絶対に放さないと返される。やがて羽咲の力が尽きてばらばらに落下するが、皆守は精一杯手を伸ばして羽咲を掴み、窓のガラスを蹴って勢いを殺して校舎のひさしに激突する。羽咲を抱いて守ったまま何度も校舎にぶつかって地面に落ちる。
皆守は身体の感覚から自分が助からないことを感じるが、羽咲との約束をようやく守れたことに安堵する。羽咲は必至で声を掛け、嘘つき、また約束をやぶる気なのか、今年の夏は沢衣村に一緒に帰ると約束した、向日葵が咲いたあの坂道を二人で登ろうと泣きながら訴えかける。皆守は羽咲がわがままを言うなんて珍しいとのんきなことを考えつつ、別れたばかりの由岐に会うことを予感しながら目を閉じる。
※Down the Rabbit-HoleⅡでは、新しい由岐が0時のチャイムを校門前で聞き、彩名に出会って新校舎の土台下へと連れられ、切り刻まれたうさぎのぬいぐるみの綿と卓司が柱に描いたリルルの絵を目撃し、建築時に使われたとおぼしきハシゴからC棟の屋上に出ている。しかし、屋上で卓司と希実香が集団自殺を扇動したことを考えると、新しい由岐は認識を捻じ曲げているだけで実際には行動していないと思しい。うさぎのぬいぐるみの残骸とリルルの落書きの映像は、卓司の記憶から引っ張ってこれる。
※It's my own Inventionでは希実香が先陣を切って飛び降りるが、Down the Rabbit-HoleⅡとWhich Dreamed Itでは希実香は最後に飛び降りているので、こちらを採用。
最初の高島メールを送信したのは誰なのか
「うわぁ……すげぇ出てきたよ……」
裏掲示板で“さとこ”と“赤坂めぐ”という女子が一時間ごとに高島メールが来たと騒いでいたけど……。
「瀬名川先生も同じだったんだ……」
この数……共有メールと見比べるとか意味ないな……。
彼女に来た高島メールの総数は62通……相手が死人じゃなくてもこんなの怖い……。
私はその62通のメールを丁寧に読んでいく。
最初のメールは当然。
2012/7/12 22:44
from 高島ざくろ
subject 無題
わたしはしぬ事によりせんしとしてうまれかわりました
のはずでしたが
いたいです
からだがないのにいたいです
こんなになってしまたのでいたいです
なので
みんなしにます
6にちごにしにます
ぜんいんかならずしにます。
(Down the Rabbit-HoleⅡ 2012/7/17)
このメールを送信したのは誰なのか。
「あ、そうだ……」
「ん? どったの?」
「あ、いいえ……少しメールを……」
「メール?」
「はい……記念メールです……」
「記念メール……誰に出すの?」
「そうですねぇ……何だか158人のメールアドレスがあるので……そのすべてに送ります」
「どんな?」
「あ、いいえ……
これは見てはダメですよ……結構、引いちゃいますから……」
「引く?」
「あ、ちょっとですね……
私、最初で最後のイタズラをしてやろうかと……」
「最初で最後の……」
「はい……最初で最後です……」
「こういうイタズラがあっても良いかなぁ……って」
「はぁ……」
そう言って笑った高島さんの笑顔は少し恐かった。
なんか凄味というか……なんか……。
呪う人みたいな……怖さ?
「……2012年7月12日……22:44……そうかそんな時間なのか……」
「こっちだとまだ夕日なのに……」
(Down the Rabbit-Hole 2012/7/12)
「痛っ……」
「ここ……」
「間宮卓司の隠れ家……っ」
くっ……立ちくらみ……頭が痛い……。
この感覚……またか……。
俺は携帯電話をポケットから取り出す。
「……やっぱり」
また……いや前回ほどの長い跳躍ではない……それにしても……。丸二日……。
「7月12日……22:30……」
(Jabberwocky 2012/7/12)
ざくろがDown the Rabbit-Holeで同日同時刻にメールを送信している。
ざくろが戦士に生まれかわるために飛び降りたことを知っているのは本人と宇佐美・亜由美だけ(あと、彩名)。
2012/7/17 22:30より少し前に卓司がざくろの霊に襲われる幻覚を見て気絶し、皆守が目を覚まし、そのまま意識を保って家に帰っている。
メールの時刻が間違っていないなら、ざくろの霊が卓司が気絶して皆守が起きるまでの間にメールを書き、裏掲示板の登録情報を使って158人に一斉予約送信した、と推察される。
ざくろの死から早すぎるメール
私は受信ではなく今度は送信メールを確認する。
高島メールがはじまってから瀬名川先生は返レスをしている。
2012/7/12 19:02
to 高島ざくろ
subject Re:
なんのイタズラですか?
高島さんのメールを装ってなんて不謹慎すぎます。
あなたは誰なんですか。
(Down the Rabbit-HoleⅡ 2012/7/17)
ざくろが死んだのは同日18:42なので、その直後に送られたメールに返信していると推察されるが……? この時間に卓司はまだ意識があるし、瀬名川のメールをチェックした新しい由岐は、最初の高島メールが送られたのは22:44と言っている。
卓司の目を盗んでざくろの霊が自分の携帯で瀬名川個人にメールした可能性もあるが、単に19:02という時間が間違っている気がする。
間宮夫妻の死
……動揺しているんだ……私。
思いの外……動揺するんだ……こういう事って……。
あまりくわしくないから知らなかったけど……。
親戚のおじさんが癌で死んだ時に立ち会ったのとは全然違うんだな……。
(Down the Rabbit-HoleⅡ 2012/7/13)
父は胃ガンで亡くなり……母も死んだ。
二人とも、もうこの世にいない。
(It's my own Invention 2012/7/2)
恨む……。
そう……ボクはお母さんを恨んでいた。
あんな母親を誰が許すことが出来るだろうか……。
ボクをあれだけ振り回しておきながら……最後はボクを見捨てた……。
見捨ててなかったのかもしれないけれど……結果は 死という結果で終わった……。
(It's my own Invention 2012/7/13)
書くまでもないが、琴美はまだご存命。
誰の指紋だ
「そう……私の部屋に散らばっていた指紋は一つ。でも高島さんの机にあった指紋は二つ」
「それだけなら不思議じゃないけど、なぜか高島さんの携帯についていた指紋は五つ」
「高島さんの携帯についていた指紋で分かっているのは、私のもの、橘さんのもの、清川先生のもの、そしてもちろん……高島さんのもの……分からないのは一つだけ」
(Down the Rabbit-HoleⅡ 2012/7/18)
①私(間宮皆守)②希実香③清川④ざくろであと一つは誰の指紋だ? 清川はどのタイミングで触ったんだ?
悪魔
「えっとですね。今日の清川先生の行動は、まず午前中に悪魔を見に行かせるって救世主様が連れて行きました……」
「ボクが? どこに?」
「さぁ……私は知りませんけど……たぶん校内でしょうねぇ、良くもまぁあんな戒厳令しかれてる様な校内を歩き回れますよね救世主様は」
「ああ、ボクは救世主だからな……それで? その後は?」
「帰ってきました。無事に二人ともです」
「それで?」
「清川先生はですねぇ、その後“悪魔は救世主様と同じ顔をしているっっ”ってすんげぇ怯えてますよ……あっちで……」
「あっち?」
奥で小さくなって震えている人間がいる。
あれは……清川か……。
何であんな怯えてるのだろう……。
「何を見せたんですか?」
「さぁ……何か見せたんだろうけど……良く覚えてない……それより橘」
(It's my own Invention 2012/7/17)
新しい由岐がこの日に清川と会っているので正体はそれだとして、卓司が見に行かせるとは何だろうか。
三大電波ゲーム
本当は、邪気眼とか厨二病とか末期少女病とか言いたいところではあるけど……そりゃ怒られそうだ。
(Down the Rabbit-Hole 2012/7/12)
『末期、少女病』は、『ジサツのための101の方法』の関連作(無期限延期中)。『ジサツ』は『終ノ空』『さよならを教えて』とともに三大電波ゲームと呼ばれる。
「やれハ○マーブロス! マ○オを倒せ! マ○オを倒せ! マ○オ様の偉業を否定する精神科医をぶっ倒せ! ぶっ壊すんだぁぁああ!」
(It's my own Invention 2012/7/19)
マリオの偉大な業績を否定する精神科医は、『さよならを教えて』の大森となえさん。
出ないゲーム四天王
「あのな。希実香……あれ知ってるか? 四天王」
「あ! 色々ありますよね!お笑い四天王とか! アイドル四天王とか! 出ないゲーム四て……」
「はうっ」
「神々の怒りをくらいたいのか……お前は」
(It's my own Invention 2012/7/17)
『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』は、すばひび発売から五年と半年経つことの2015年10月23日にめでたく発売された。
ケロQ作品とのリンク
とっさに嫌がらせで妹とか言ったが……妹?
なんで妹が出てくるんだ? 妹なんかに欲情する様な変態が世の中にいるわけないだろう……だって妹だぞ。
いや……でもたしか間宮卓司の所有物の中に“妹”と言う文字が入ったゲームがいくつもあった……。
妹監禁ゲーム……通称『イモかん』とか……『妹ノ空』とか……なんかいろいろあったな……。
(Jabberwocky 2012/7/4)
あえて書くまでもないが、『モエかん』『終ノ空』が元ネタ。
「うん、北校の城山翼の死……そして高島ざくろ、海老須川校の築川宇佐美、聖ノ川女子瑞緒亜由美の三人の死、これははじまりに過ぎないんじゃないかってね……」
(Which Dreamed It 2012/7/15)
宇佐美が通っていたのは『えびてん 公立海老栖川高校天悶部』の高校らしい。
向日葵の道を越えると……あの暗闇の坂道が姿をあらわす……。
去年と同じように……まるでそれは霊界に続く坂道の様だ。
去年は知らなかったけど……実際に、坂道を霊界との境界線だと考える人は多かったらしい。
古い本にはそういう記述が何個もある事に後から気が付いた。
(JabberwockyⅡ)
『二重影』に同様の解説があったはずだ。山で異人の首を持って大声を上げながら境界を歩いたのが「道」の成り立ちという。
夏の日差し……、
青い空……、
大きな雲。
緑の木々……、
そんな風景の中を歩いていた。
風が吹くたびに草の香りがした……。
川のせせらぎ……、
土の香り……、
ここは父親の生まれ故郷……、
名前は沢衣村と言う……。
といっても……ここが日本地図のどこにあるのかすら良く知らなかった。
ただ、この村の夏は東京より涼しく、冬は寒い。
幼い俺にはその程度の事しか分からなかった……。
(JabberwockyⅡ)
沢衣村は『H2O -FOOTPRINTS IN THE SAND-』の舞台。すばひびとは一部のロケーションも共通している。
「でもさ、皆守はこんな話聞いた事ある?」
「話?」
「うん、砂浜の足跡……」
「何だそれ?」
「神は我々と共に歩む……だから、死後、自分が歩いた道を見ると……必ず寄り添う足跡がもう一つ見つかる」
「人生は、寄り添う力で支えられてる……」
「でもさ……一番つらい時、悲しい時に、足跡は一つになってるんだってさ……」
「一番つらい時に……そばにいないのかよ……でも、それが神様ってヤツだよな」
「違うよ……」
「その時……神は、立ち止まって動けない人の足そのものになってくれるんだってさ……」
「自分の足そのもの?」
「そう……立ち止まっていると思えた道も……かならず先に進んでいる……」
「まるで、羽咲ちゃんが登れないと思った、あの坂道みたいに……」
(JabberwockyⅡ)
『H2O』劇中でもこの説明があったと記憶している。
春の雪。
桜が舞う季節。
羽咲と俺は一学年上に上がった。
もちろん由岐姉も……、
また新しい一年が始まるんだ……と思った。
(JabberwockyⅡ)
『サクラノ詩』の第1章部分の先行公開時のサブタイトルが「春の雪」。製品版のオープニング曲「櫻ノ詩」にも「春の雪」という一節がある。
「いつでも人は、何かしらの存在意義の不安に苛まれている……我々が何であるかという疑問……」
「D'ou venons-nous? Que Sommes-nous? Ou allons-nous?」
「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか……」
「そう。フランスの画家ポール・ゴーギャンが自殺する直前に……名付けた遺作の題名だ……」
(Wonderful Everyday)
『サクラノ詩』と共通する要素、思想はキリがないけど。
レジのおばさんは二度打つ
「お前の趣味じゃない……あと、お姉さんって何だ?」
「あら反応遅っ……でも、わりかし正解じゃない? 私の方があんたより生まれたの先なんだからさ」
「先に生まれたら、何でも姉か? ならレジ打ってるおばさんも、信号で旗振ってるおばさんも、全部姉になるな……」
(Jabberwocky 2012/7/3)
「誰でも知ってる事だよ……それこそ近所の八百屋の親父でも、スーパーのレジ打ってるおばさんでも、タクシーの運ちゃんでも……」
「今のとも兄さんの言葉の意味を?」
「ど、どういう事?」
「人よ、幸福に生きろ!」
「そういう事だ……」
「うー分からないよぉ……」
「深く考えるな……ただ、最後が命令形だって事が大事なだけだ」
2010/03/30
新規作成
2018/09/03
大幅に加筆修正
2021/11/05
さらに加筆修正
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