つい・ゆり 感想 二つの禁断で背徳感も二倍だな! 

世にごまんとある、くちばしが黄色いガキンチョが同性の関係や実姉妹での関係にうじうじう悩み、終いにゃあ刃傷沙汰に至ったり拉致監禁の暴挙に出たりするお話である。月並みもいいところだ。このご時世に、同性愛やインセストを
「受け入れられない」
「越えてはならない一線」
「社会的に、倫理的に許されない」
「ほんとうはダメ」
「両親や親友に隠し通さなくてはならない」
と頭ごなしに断定されて何の疑問も反発も湧かない人でないと、話の展開について行けないし人間にも一切共感できやしない。同性愛や近親をスキャンダラスでアブノーマルな「事件」として消費する方々に向けて作られているのが随所から伺える。
いちおう、トゥルーエンドとおぼしきものでは、姉と妹がそれぞれ自分の気持ちを受け入れて、「いつかみんながわかってくれたらいいな」とわずかながらも前向きに歩き出すが、結局具体的な展望は何一つ示されないまま終幕してしまう。私はこの手の玉虫色な落としどころに対して「『いつか』って一体いつなんじゃい! はっきり言え!」と疑問を感じずにはいられない。子どもからお年玉を巻き上げた母親の言い訳かよ、もっと歯切れのよい答えを返しやがれ。
私は『ついゆり』みたいにネガティブなことをねちねち語るだけの陰気で「情けないフィクション」に触れると、実妹や実姉がどんなに愛おしいか、血の繋がりや積み重ね(BY『咲-Saki-』)がどんなに素晴らしいか、滔々と語る作品がもっと出てきてくれないかとつぶやいている。世の中にはまだまだ「いやっほ~う! 妹(姉)最高!」という百合作品が足りていない。
作品の本質はタイトルに表れる、というのは私の持論だが、『つい・ゆり ~おかあさんにはナイショだよ~』(「ナイショ」は芸術点を付けたい)という幼稚さと加齢臭が同居するサブタイトルは、作品の程度をこれ以上なく表していると思う。
つい・ゆり ~おかあさんにはナイショだよ~
